【第34回】刺繍文化をアップデートする! (有)三葉商事 代表取締役 山下 武志氏(京都)

(有)三葉商事 代表取締役 山下 武志氏(京都)

 (有)三葉商事(山下武志代表取締役、京都同友会会員)は京都府北部、舞鶴にて1966年(昭和41年)に設立され、創業時は和装から始まり、ベビー子供服、スポーツウェアなど時代に合わせて刺繍加工を行ってきました。

 しかし、1990年代後半から縫製工場の拠点が海外に移ったことで仕事は激減、国内の刺繍工場も高齢化・後継者不足の影響を受け、2005年~2019年で売り上げは55%減少しました。

自社の強みを生かす

 しかし、そういった業況でも会社のネット販売事業だけは伸び続けていました。同友会の先輩会員から学び、同業他社と比べても早い段階でECサイトに商品を売り出せていたことが、今日の(有)三葉商事の強みとなっていきます。

 このように、「いま会社が存続しているのも、すべては同友会で学び実践し、同友会を120%使ってきたおかげだ」と語る山下氏。仕入れ先探しに全国の同友会のネットワークを活用するのはもちろん、京都同友会の「人を生かす経営」実践道場(現:「人を生かす経営」実践塾)に入門したことで、「なりゆき経営」から「経営計画」の実践ができるようになりました。指針書には社員全員にそれぞれ目標を書いてもらい、毎月進捗を確認することで社員自身も会社が自分ごとになり、理念が社内に浸透してきたという変化が見られました。

地域のコミュニティの場として

 ところが、そんな中でコロナ禍が到来します。百貨店の営業や催事も止まり売り上げが下がる中、何か新しいことを始めなければならないと、ハウスメーカーから帰ってきたご子息(山下正人氏・青年部会所属)と一緒に事業再構築補助金やものづくり補助金の採択へ向けて動き出しました。

 補助金を活用してキャパオーバーになっていた工場を増設し、社員全員でレイアウトを考え、2023年6月に新工場を竣工しました。新工場は地域に開かれたオープンファクトリーをめざし、来ていただく方に安心感・臨場感・ワクワク感を感じてもらえるよう取り組みを進めています。竣工してまもなく行政や金融機関とコラボし、学生や行員の方に見学に来てもらい、仕事を知ってもらう場・地域のコミュニティの場として早くも活用され始めています。今年は仕事体験やワークショップの場として新工場を活用できるように計画中です。

新商品・新市場へ挑戦

 新工場開設と共に「刺繍文化をアップデートする!」を合言葉とした製造商品・市場の変化を狙っています。現状の「ワンポイントマークの刺繍×衣料品市場」から「刺繍テキスタイル×衣料品以外の市場」へ向けて、従来の40倍の面積を縫うことができる機械を導入しました。刺繍を布全面に施すテキスタイルを用いた布をソファやクッションなどに加工することで、それを卸す先も衣料品市場からホテル業界や内装業界に変化します。また、従来の主力商品であった子供服やスポーツウェアなど衣服へのワンポイント刺繍は単価の低さが悩みでしたが、テキスタイルが主力になればそれも解消されていく見込みがあります。

 刺繍は高級感も色数もあり、1メートル単位の小ロットも対応可能で、オリジナル商品を直接エンドユーザーにお届けできることが強みと考え、今はインテリア業界とのコラボを見据えていますが、いずれは観光・食・ペット業界など、さまざまな分野に広げていきたいと力強く語りました。

 同友会での学びを軸に、後継者と二人三脚で時代の変化に対応する山下氏。会社と社員の思いが詰まった指針書と共に「人とアイディアがあふれる共創ファクトリー」をめざし邁進し続けています。

(有)三葉商事
設立年 1966年10月1日(創立1963年10月1日)
資本金 850万円
従業員数 28名(社員13名・パート15名)
事業内容 刺繍業、小物雑貨製造・販売
住所 京都府舞鶴市福来579
電話番号 0773-75-5514
URL https://www.mitsuba.biz