【第41回】経営指針の実践、社員とともに変化していく企業づくり (有)伊藤歯車製作所 代表取締役 伊藤雄一郎氏(大阪)

(有)伊藤歯車製作所 代表取締役 伊藤雄一郎氏(大阪)

 だんじり祭りで有名な岸和田市にある(有)伊藤歯車製作所(伊藤雄一郎代表取締役、大阪同友会会員)は、歯車の製造を行っている会社です。

 代表取締役の伊藤雄一郎氏は祖父と父の後を引き継いだ3代目社長です。伊藤氏の祖父が歯車工場として1951年に創業し、現在は材料の調達から完成品まで工程管理をしながら歯車部品を製造しています。

 (有)伊藤歯車製作所の強みは、歯車という特殊な加工を要する部品を多品種小ロットで対応ができることです。それによって1社に依存せずあらゆる企業と取引ができています。

社内全体で取り組む3S活動

 伊藤氏は、2018年に代表取締役に就任しました。承継の際、新しいことを取り組むと先代が反対するということはよくあるケースですが、伊藤氏の父は「やりたいことはどんどんやっていき!」と前向きに見守ってくれたそうです。

 それから経営指針書を作成し、1つ1つ実践していきます。最初に取り組んだのが3S活動です。物が散乱していたため、いるものいらないものを分けて整理していきました。それに対しあまりよく思っていなかったベテラン社員がいましたが、工場にやってきたお客さんから「工場の中がとてもきれいですね」と褒めていただくことが増え、その声を聞いた社員はうれしくなりそれから整理が進みました。整頓については3S活動が進んでいる大阪同友会会員企業を訪問し学びました。その後自社でも、どこに何が置かれているかわかるように使用する工具の形に板をくり抜き引き出しに当てはめ、工具の置き場所を決めました。さらに工具を誰が持ち出しているのかわかるよう、持ち出すときに名札を置くというルールも設定しました。最初は意識づけができなかったのですが、今はそれが当たり前になっているそうです。

 現在は3S活動委員会に入っている社員が中心となって3S活動について提案を行い、社内全体が協力して行う風土になっています。

組織力強化へ

 現在伊藤氏が積極的に取り組んでいることが「組織力強化」です。組織図で、誰がどの役割を担うのか誰でもわかるようになっています。相談の仕方も、リーダー→主任→課長→副工場長→工場長→社長の順にすることでそれぞれの役割が明確になるのと、現場と幹部の意思疎通がより図れます。また、社員に現場を任せることができて、社長がいなくても回る状態になっています。  

 ビジョンを作成した際に社員から自社の強み弱み、会社の未来像をヒアリングしました。すると、一番の強みが「若い社員が多いこと」、弱みは「コミュニケーション不足」「人材不足(新入社員教育)」であることがわかりました。そこから各部門の後継者をつくらないといけないということに気づき、新たにスキルマップを作成しました。スキルマップは部門ごとに業務を一覧にし、できることにチェックを入れて、この社員はどこまでできているかひと目でわかるマップです。それと合わせて、年表未来図を部門別に社員の名前と年齢を記載したものを作成し、いつまでにそれぞれの部門で後継者をつくらないといけないのかよりわかるようにしました。そうすることで社員内でも危機感を持ち、「自分がどこまでできるようにならないといけないか」と考える社員が増えました。また、「この部門が人手不足になるので今のうちに採用にチャレンジした方がいいのではないか」というような話も幹部だけでなく、社員全体が自分事として捉えるようになりました。

さいごに
 社内で作成した2023年ビジョンも少しずつ実現しています。さらに社員がやりたいことが実現できるようこれから2030年ビジョンの作成に取りかかるそうです。

 伊藤氏は2024年度から大阪南ブロックのブロック長になり、南ブロックでもワクワクするビジョンを作りたいと目をキラキラ輝かせながら意気込んでいます。南大阪エリアがこれからさらに盛り上がっていくことでしょう。

(有)伊藤歯車製作所
創業 1951年7月
設立 1957年12月
資本金 1,500万円
年商 30,165万円(2024年1月期)
業務内容 各種歯車及び歯車関連部品の加工・製造
社員数 28名
所在地 本社・工場/大阪府岸和田市磯上町(岸和田工業センター協同組合内)
URL https://ito-haguruma.jp