
(株)ラダー 代表取締役 梶 真佐巳 氏(千葉)
(株)ラダー(梶真佐巳代表取締役、千葉同友会会員)は経営理念「コーヒーで社会をあたためる」のもと、ドトールコーヒーを運営する「コーヒーを提供するピープルカンパニー」。店舗がある船橋駅周辺は交通の利便性のよさから人通りが多く、店内は常ににぎわっています。そこでは障害の有無関係なく、従業員が生き生きと働いています。
明確でわかりやすいこと、自分で実感できること

同氏が人材不足や残業時間の増加による従業員の士気の低下に悩み、本格的に社内改革を始めたのは2023年の夏ごろでした。本格的な障害者雇用もその一環だったと言います。まず始めたのは、求められる資質の明確化、役割定義書の作成、会社貢献度に応じた評価基準の定義化です。評価基準には礼儀やマナーのほかにも、SNS内の連絡網への反応なども挙げられています。採用面接では経営理念とともにそれらを希望者に伝え、納得したうえで入社してもらっています。入社後は、初級(入社後3カ月間)、1級、2級~と役割が分かれており、希望と評価に応じて、役割と時給が変わっていきます。合わずに辞めてしまう方もいますが、残った人の定着率は高いと言います。
長期勤務者の定着率が高い理由は他にもあります。それは将来に生かせる経験や役割を与えるよう心がけているからです。面談の際に、本人の特技や将来像を聞き、それを生かせる仕事を任せています。例えば、情報発信が上手な方をSNS担当、企画系の仕事に興味のある方にはイベントの担当を任せたりしており、それによって自主性や主体性が生まれていったと言います。「学生アルバイトが多く、いずれ店を卒業してしまう子がほとんどです。ですが、卒業した後も生かせる能力を身に付けることができる。なりたい自分に近づくことができる。また評価基準が明確になっていることで、積極的な行動が時給にも反映することがわかるため、モチベーション高く、自主的に働く人が増えています」と同氏は話します。
障害者雇用をフラットな視点で

人材確保のために取り組み始めた障害者雇用ですが、日本の人口動態を再認識するきっかけになりました。2050年には全体の半分が高齢者や障害者の方になるとの予測も出ており、そのころにはみんなで働く職場が当たり前になっているのではないかと気づきます。そして特別待遇や特別視をするのではなく、みんながフラットに働ける職場を今からつくっていく必要があると決心します。
現在同社で働いているD氏は知的障害を持っていて、特別支援学校に通っていました。在学中の実習訓練を2年間(計4回)同社で行い、卒業後に入社しました。健常者と同様の評価基準のもと、本人が何に貢献できるかを考えてもらっています。「D氏は家族や仲間を支えたい、助けたいという気持ちを強く持っています。それを実現するためには今の能力や給料でいいの?と聞いています。すると、何を頑張らないといけないのかが明確化したのか、前向きに頑張ってくれています。緊張しやすいなどはありますが、十分働いてくれています」と話します。また今年4月にD氏の後輩の入社が決まっており、教育係を任されているD氏は自らが意識して先輩にアドバイスを求め、自分がどのように教わってきたかを振り返っていると言います。
価値観の変化
「人の価値観は常に少しずつ変化していきます。コンビニの外国人店員も最初は違和感があったかもしれませんが、最近では特に珍しいことではないと思いませんか。障害者雇用もそうです。今は先進的な取り組みとして取り上げられるかもしれませんが、ゆくゆくはそれが当たり前の時代が来ます。○○だからできるはずがないと決めつけずに人の可能性を信じて、まずは社内から”みんなで働く職場“をつくっていきたいと思っています」。外部環境が目まぐるしく変化する中、中小企業も変わっていかなければいけないと熱い思いを胸に梶氏の挑戦は続きます。
(株)ラダー | |
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設立年 | 1975年 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 65名(うちアルバイト60名) |
年商 | 2億3千万円 |
事業内容 | カフェチェーン店舗運営および人材育成事業 |
住所 | 船橋市宮本2-4-22 |
電話番号 | 047-460-8522 |