
京兼醸造(有) 代表取締役社長 京兼 慎太郎氏(香川)
醤油屋から“うどんつゆ専門”へ

香川県琴平町にある京兼醸造(有)(京兼慎太郎代表取締役社長、香川同友会会員)は、1919年(大正8年)創業、100年を超える歴史をもつ老舗の醸造元です。もともとはしょうゆの製造・販売を中心に事業を展開していましたが、オイルショック以降の価格競争の激化により業界全体が大打撃を受け、約1万社のしょうゆ業者が廃業に追い込まれました。京兼醸造も厳しい状況に直面するなか、香川県で巻き起こった“うどんブーム”と瀬戸大橋の開通による観光客増加が、新たな活路を開きます。
観光名所・金刀比羅宮を有する琴平町では、県外から訪れる観光客がうどんをお土産として購入するようになり、地元うどん店からの“つゆ”の製造依頼が増加。これを契機に、同社はうどんつゆの製造へとシフトしていきます。やがて、その専門性を磨き上げることで、全国600店舗を超えるうどん店を支える存在へと進化を遂げました。
苦境のなかで見いだした「経営の芯」

3代目である京兼氏が25歳で入社した当初、同社の売り上げは伸び悩み、ECサイト「京蔵」の立ち上げもなかなか軌道に乗りませんでした。うどんブームの沈静化、試作を重ねたラーメンたれやソース類の失敗、社員の退社が重なり、会社に寝泊まりしながら一人でシステムやHPの制作を行う日々が続きます。
そんな中で出合ったのが同友会でした。入会後すぐに経営指針を成文化し、自社の進むべき方向性を見つめ直します。当初は理念を掲げても社員にはなかなか伝わらず、実践に苦慮する時期もありました。しかし、同友会の仲間から「今後、労働人口の減少がうどん屋の運営に影響する」という気づきを得たことで、単なる“つゆづくり”ではなく、“店舗経営そのものを支える”という方針に舵を切ります。
「味と香り」に込めた約束と信頼

現在、京兼醸造はうどんつゆの製造・販売だけにとどまらず、店舗の内装・オペレーションの設計支援、製麺機の特性アドバイスなど、うどん店の開業・運営に深く関わる「課題解決型」の企業へと進化しています。時には京兼氏自らが店舗に立ち、接客の現場をともに経験するほどです。
その背景には、過去のある苦い経験がありました。あるうどん店との取引で、「うちが潰れても、あんたのとこは他の店に売ったらええだけやろ」と言われた言葉が今も胸に残っていると言います。味や運営の課題に対し、遠慮して本音が言えなかったことを悔い、「もう嘘はつかない」「正直でいる」「取引先にも価値を届ける」という信念を持つようになりました。
同社の工場では自動化による効率化が進められており、その多くは京兼氏自身の技術習得の成果によるものです。一方で、味や香りといった“人の感覚”が求められる工程は、今も社員の手で丁寧に仕上げられています。原材料の価格が高騰する中でも、安易な値上げに頼らず、企業努力で利益を生み出すことが「お客さまの笑顔」につながるという強い信念をもって日々取り組んでいます。
「味と香りに託して、未来に繋ぐ和心を伝える」。この経営理念こそが、京兼醸造が100年以上守り続けてきた精神であり、次の時代へとつないでいく“信頼の証”です。
| 京兼醸造(有) | |
|---|---|
| 設立年 | 1953年 |
| 資本金 | 1,000万円 |
| 従業員数 | 17名(内パート7名) |
| 年商 | 3億5000万円 |
| 事業内容 | うどんつゆの製造・販売 |
| 住所 | 〒766-0004香川県仲多度郡琴平町榎井162-3 |
| 電話番号 | 0877-73-4233 |
| URL | https://kyokane.asia/ |










