【第33回】日本一ストレスのない職場環境で働いてほしい (株)大有設計 代表取締役 小野 晶紀氏(大分)

小野晶紀社長

(株)大有設計 代表取締役 小野 晶紀氏(大分)

社屋外観

地方の設計事務所としては数少ない総合設計事務所(意匠設計、構造設計、電気設備設計、通信設備設計、機械設備設計、設計監理、耐震診断等建物調査)で各分野のスペシャリストがそろう(株)大有設計(小野晶紀代表取締役・大分同友会会員)は、北海道から沖縄まで主要官公庁、自治体、一般の民間事業主を取引先としています。

貯金残高15万円では暮らせない

小野氏は建築を学ぶために長崎県の大学に進学し、卒業後地元の設計事務所に就職しました。

当時はバブル景気による売り手市場で、一代で120人規模の会社を育て上げた社長の下で幸運にも働き始めることができました。学生時代は遊んでばかりで最低の成績で卒業しましたが、社長からは「学歴が通用するのは3カ月だけだぞ」と言われ、「自分を変えてみよう…」と仕事にのめり込み、今で言う過労死ラインを大幅に超える残業を続けていた時期もありました。

ある日、社長がお風呂で転倒した影響で経営を続けられなくなり、息子が呼び戻されて社長に就任します。ところが、次第に経営が悪化して給料が1カ月、2カ月と遅配するようになり、小野氏の貯金はわずか15万円にまで減少していました。そこで小野氏は独立を決断します。

独立に掲げた3つの思い

同社が設計した建物

独立にあたって、①先に独立した先輩たちと競合しないように県外で仕事をして外貨を稼ぎ、大分で雇用と納税をすること、②個人個人の仕事に見合う給料を支払い社員にやりがいを持ってもらうこと、③ストレスのない会社で仕事の効率を上げることを掲げました。

幸い、前の会社で培われた高い技術力が認められ順調に仕事が増えていきました。ただ、眠れるのは朝方の2~3時間で、会社で夜を明かすことも多く、「このままでは体がもたない」と社員を採用することにしました。2010年には社員が10名に増えましたが経営は相変わらずの丼勘定で、「経営の勉強がしたい」と顧問税理士に相談したところ、大分同友会を紹介されて入会しました。

日本一ストレスのない職場環境をめざして

ストレスの原因はお金や人間関係、有給休暇の取得や家族の理解など、物心両面にわたります。同社では役所や同業他社に比べて高い給与水準を維持し、年105日の休日に加えて有給休暇の完全消化をめざしています。また残業時間の管理も徹底し、偏りがないように心配りをしています。産休・育休、介護休暇なども整備されていますが、まだ該当する社員はいません。

去年の春から7つの委員会(HP、PC、福利厚生、業務改善、広報、採用、社員教育)を設けました。同じ部門の社員で固まらないように所属して、毎週30分以上の打ち合わせをしています。外部講師を招いた1日研修を行ったり、採用向けパンフレットの作成やHPの更新を行ったり、毎週のヨガ、ソフトボール大会や忘年会などが行われています。「いままでは社長が1人でやっていましたが、社員だけで考えて取り組む全員参加型に近づけています。また、コミュニケーションを深めるために、少人数で年間12回は飲みに行くようにと、毎回費用の一部を補助しています」と小野氏。

2019年からは仕事の見える化を図り、人事評価制度を取り入れています。評価項目の数は役職者では何と300個。一般常識と技術力について上司とリーダーが評価して、評価については本人にフィードバックし今後の成長へとつなげています。「その点数に応じて給料が決まるので、具体的な目標が明確になり、社員も努力のしがいがあるようです」と小野氏は語ります。

社員さんの声

社員さん

氏名:岡本 美空さん(建築設計部)

Q1.現在の仕事内容
建築設計部で一般に意匠設計と言われる設計図やパースを作成する仕事をしています。設計図、パースを作成するためにお客様と打ち合せをして間取りや形状、レイアウトやデザインを考えたり、法的な基準、各役所の申請や届出などを網羅し、そのために構造、設備、各役所担当者との調整、協議などを行っています。

Q2.入社の動機
高校時代に建築系を専攻し、より専門的な知識を身に付けたいと思い大学へ進学しました。大学で建築について学び、知っていく中で数ある建築系の職業の中でも設計の仕事に就きたいと思うようになりました。就職をする地域としては、できれば地元大分で働きたいと考え、地元の設計事務所で就職先を探しました。会社説明の際に、不安や疑問が残らないように社長自ら会社の方針や業務内容等とても丁寧に説明され、目標を掲げ目標に向かって努力・成長しようとする会社の姿勢がとても印象的でした。その中で自身の成長する姿がイメージできたこと、ここで一緒に頑張りたい、成長したいと思い入社を決意しました。

Q3.社内の雰囲気
入社したころは近い年齢の方は少なく、どちらかというと上司や先輩がたくさんいるような印象でした。上司や先輩はたくさんの仕事を抱える中、気にかけていただきとても丁寧に指導され、新入社員を育てようという姿勢が伝わってきました。今では新入社員と先輩社員をつなぐ若手社員の層ができ、先輩が後輩に教えながら一緒に育っています。若い社員が多い会社ですが若手を見守り、時には指導しながら育ててくれる先輩や上司のおかげで会社全体が成長しているように感じています。業務面だけでなく、福利厚生などいろいろな取り組みは始まったばかりで、これから成果を積み上げていく段階ではありますが、どの取り組みも社員の意見を聞きながら、社員目線で考え、良い形になるよう社長を中心に全員で試行錯誤しています。

Q4.働きがいはどうですか
建物は人の生活と密接なつながりがあります。たくさんの人の命を守る責任のある仕事です。40歳を過ぎて一人前と言われる業界で、まだフォローをされながら仕事を進めています。それでも、少しずつ表に立たせてもらえるようになってきました。お客様に喜んでもらっていることや、仕事をやり遂げたという達成感に働きがいを感じています。

経営理念

1.社員とその家族の物心両面の幸せ造り
2.お客様に求められる会社造り
3.地域社会に必要とされる建物造り

会社概要

設 立:2006年
資本金:510万円
年 商:5億円
事業内容:意匠設計、構造設計、電気設備設計、機械設備設計
従業員数:47名
URL:https://dai-yu.jp/