【第20回】地域の頼れるパートナーへ (株)ヤスバン 代表取締役社長 塗信 正利氏(鳥取)

(株)ヤスバン 代表取締役社長 塗信 正利氏(鳥取)

 塗信正利氏((株)ヤスバン代表取締役社長、鳥取同友会会員)は、自動車の鈑金塗装、車検・整備、シートクリーニング、ボディーコーティング、10分100円で借りられる「100円レンタカー」を営むヤスダ自動車鈑金塗装を2011年7月に事業承継し、今年10月に法人化して(株)ヤスバンとして新たなスタートを切りました。

高付加価値化と新事業創出

 事業継承後も変わらず現場作業をしていた塗信氏でしたが、1年が過ぎるころに売り上げ上位の取引先が倒産。他の取引先も徐々に減っていく中、2016年に代車を活用した「100円レンタカー」をスタートしました。2024年は約1100万円の売り上げとなり、ウエブサイトからの問い合わせも増え、レンタカーを窓口に鈑金や整備の仕事も増えつつあります。

 また、往復3時間かけて岡山に通い、国家資格の車体整備士を取得。新たな土地を購入して2018年に工場と事務所を新築しました。しかし、旧工場時代の体制のままで社員とのコミュニケーションは少なく、現場との連携が希薄で、初めての赤字決算となりました。

 翌年12月、(株)山田製作所(大阪同友会会員)の3S研修を社員全員で受講し、社内で3Sを定期的に実施し始めます。業務改善や整理整頓の工夫、朝のラジオ体操、朝20分の工場清掃などを取り入れました。研修の際に山田社長から同友会への入会を強く勧められ、地元の知り合いの紹介もあり2020年3月に入会。しかし、その後すぐにコロナ禍に突入します。

 コロナの影響が少ない業界ではあったものの、移動の減少に伴って事故も減少し、部品の入荷遅れや新車の納期遅れなどもあって県外では廃業する同業者も出ました。その対策として、一台当たりの単価を上げるための講習に参加したほか、県外の同業者に相談し、同業他社のいいとこどりをして、現在は「県内でトップ3の単価」と言われるまでになりました。

経営指針成文化と社内環境整備

 塗信氏は「経営指針を創る会」に参加してビジョンを明確にし、入社した若者たちが安心して働き、安定した生活を送れる道標になるよう経営指針を成文化しました。しかし社員の反応は薄く、指針の浸透には程遠いと実感した塗信氏は、社員を巻き込んで毎年更新することを誓います。2024年4月には、鳥取同友会の合同入社式と新入社員研修に若手社員2人とともに参加。社員たちは前向きに参加してくれ、少し意識が変わったように感じたと言います。

 さらに、今まで以上に社員とコミュニケーションをとり、意見を聞きながら、工程管理のやり方や、担当者や役割の変更など仕組みを変えていきました。工場にエアコンを設置したり、代車やレンタカーを増車したりと設備投資も行い、年に2日ずつ休日を増やして給与面は県内の業界内で高水準。また、夏は冷蔵庫に各種ドリンクと業務用製氷機を設置し、冬はホットケースに飲料を常備して「置き型社食」も導入しています。承継当時から変わらず思い続けていることは「職人さんが働きやすい会社にしたい」ということ。参入障壁が低い業界でもあるため、設備投資や環境整備を通して、社員たちから選ばれる会社になるよう改革しています。

 以前、社員から「ワンマン社長だ」と言われたこともあります。よかれと思って社員に相談せず、設備を導入していたからでした。現在は任せる勇気を持ち、経営者である自分にしかできないことに向き合う時間をつくって、社員たちに相談するようにしています。「いつかは誰かの力になって今までの恩を返せるよう励んでいく。今後はさらに自社の技術力と組織力の底上げを図り、地域にとってなくてはならない会社をめざします」と塗信氏は明るく語りました。

(株)ヤスバン
創業 1975年10月
設立 2025年10月
資本金 100万円
事業内容 鈑金塗装、車検・整備、レンタカー、シートクリーニング、ボディーコーティング
社員数 8名
所在地 〒683-0853鳥取県米子市両三柳98-3
TEL 0859-36-8661
URL https://www.yasuban.com/