【第19回】”誰のための会社なのか”会社の主役は社員。経営者の自分は黒子 澤川鍛造工業(株) 代表取締役 澤川 幸利氏(富山)

澤川鍛造工業(株) 代表取締役 澤川 幸利氏(富山)

 澤川鍛造工業(株)(澤川幸利代表取締役、富山同友会会員)は、旋削・切削加工や研削加工のプロフェッショナルとして、高精度な加工品の製造を行っています。ものづくりのまち高岡で創業120年を超える老舗企業です。4代目の澤川氏は大学院卒業後、自動車部品メーカーでの修行を経て、1999年に同社に入社しました。当時の社内は、社員は会社の、社長は社員の悪口を言い合い、飲み会ではいつも社員同士の喧嘩が起きるような状態で、リーダーシップを発揮しようとしても、成果には結びつかず苦悩する日々が長年続きました。

 2008年、リーマンショックの影響で毎月500万円の赤字が続き、やむを得ず人員削減に踏み切ります。先代社長が身を削ってまで賞与を支給しましたが、社員からは文句が出るばかりでした。翌年、澤川氏は9年間の現場経験を経て、経営者として自覚がないまま社⾧に就任しました。当時は、社長が一方的に指示をして、いかに社員を働かせるかしかを考えておらず、社員に頼ることはほとんどありませんでした。

自社にとって真の顧客は誰か

 2012年、先輩会員の勧めで同友会入会し、支部の理念塾を受講します。いきなり「あなたの会社の真のお客さまは誰ですか?」という問いかけが、澤川氏の胸に深く刺さりました。実は世界中で動くミニショベルの約50%には同社製の部品が使用されています。これまで目の前の取引先だけしか見えておらず、その先の現場で建設機械を使う人々のことまで考えたことがありませんでした。自分たちの仕事は世界中で使う人の幸せにつながると社内で伝えると、自然に不良品の割合が減り、結果として激減といえる結果が出ました。

 澤川氏は「よい会社」とは何か悩みながらも同友会に積極的に関わるようになります。2015年の経営指針を創る会受講中、誰のために会社をやっているのかに気がつき、「会社の主役は社員。経営者の自分は黒子」という考えに一変。社長の自分が真っ先に働かなくてはと誰よりも現場に入っていましたが、「ものづくりの楽しさ」を社員から奪っているのではと考え、積極的に社員に任せるようになりました。いざ任せてみると不安はありましたが、出来上がった製品を持ってきた社員の誇らしげな顔を見たとき、「これが幸せか」と実感しました。また幹部の意見から「科学性・社会性・人間性」のうち「私たちは、お互いの個性と存在価値を共有し、社員全員で幸せを感じます」という人間性を第一に掲げることにしました。作業環境の改善や幸せを感じられる企業づくりに取り組み『死ぬまで働ける企業づくり』を日々めざしています。

社員の主体性を磨く

 澤川氏が入社した当初、売り上げの100%を占めていた鍛造分野から、旋削加工分野を徐々に拡大させ、事業変革を実現しました。社員の学びたい意欲、新しい技術を身に着けたい気持ちをいかに醸成するか。技術研修や書籍の購入などサポートしつつ経営幹部とともに日頃の声かけを欠かさずに行っています。

 2年前の創業120周年を機にホームページのリニューアルを若手社員に任せました。ある隠れた仕掛けは女性社員のアイディアによって生まれました。Instagramにも力を入れて、ホームページ経由の問い合わせは最大10倍まで増えました。自社PR動画を作成した際は、若手社員が自社の魅力を議論している会議の場を覗くと「会社の一番よい所は上司・社長が接しやすいところ」と書いてあり驚きとうれしさがこみ上げました。また制服をリニューアルする際にも好きな色が選べた方が幸せという意見を採用し6色すべてを採用しました。多様な意見も受け入れ、やってみようという組織に変わってきたことを実感しました。さらにシニア世代や外国人材も活躍する企業になってきました。ベトナム人社員が働きやすい職場だからと学校を出たばかりの弟を紹介してきたときはうれしかったと語る澤川氏が印象的でした。

澤川鍛造工業(株)
創業 1903年
設立 1963年
資本金 1,000万円
年商 4億5,300万円
従業員数 38名
事業内容 精密油圧部品の機械加工、鍛造アルミホイールの旋削加工、超大型ベアリング部品の機械加工
電話 0766-63-1263
住所 富山県高岡市戸出春日786
URL https://www.sawakawa.co.jp/