
穴吹鉄工(株) 代表取締役社長 岡本 英士氏(徳島)
徳島市内から約1時間、吉野川の上流に位置する脇町に所在し、昨年創業60周年を迎えた穴吹鉄工(株)(岡本英士代表取締役社長、徳島同友会会員)。徳島県内に26社ある鉄工所でも高齢化が進む中で、社員の平均年齢38歳は県内トップクラスの若さを誇ります。
穴吹鉄工(株)で3代目として奮闘する岡本英士氏は、2021年に父から事業を承継しました。高校時代は野球に打ち込み、補欠でキャプテンをしていた経験から、リーダーとしてチームをまとめることはできても、自分だけの力では何も成し遂げられないという価値観を持っていた岡本氏。「社員はパートナーというより仲間」だと考える根底には、この野球部での経験が大きく影響しています。
全員が豊かな生活を送る

2020年に同友会に入会し、代表取締役に就任したのを機に経営理念と10年ビジョンを成文化しました。社員の前で完成した指針を発表して「よい会社にする」と宣言したものの、明確なゴール設定がなかったと当時を振り返ります。
その後、コロナ禍の材料費高騰や建築減少による大幅減収で、2年連続の赤字を出しても危機感すら感じていなかった自分に投げられた先輩経営者からの厳しい言葉に、赤字を出したのは経営者としての怠慢だと気づいたことが転機となりました。「今のままで社員の生活を守っていけるのか?」と自問自答する中で、本気で「社員も含めてこの地域に暮らすみんなが働きやすくなる街づくりをしていこう」と考えるようになり、ここで出した1つのゴールが、2028年10月竣工の新工場の建設でした。
「新工場を稼働させて売り上げと給料も上げて、全員が豊かな生活を送る」。このゴールを社内でも共有して計画を進め、社員と一丸になっていると感じていた経営幹部会議で、熱量が高かったのは自分だけだったことを突き付けられました。この時、最初の指針発表と同じように、ビジョンを掲げているだけでトップとして具体的なアクションプランを示せていなかったことにも気づかされました。
職人集団から自走する組織へ

これまでもうすうす気づいていながら向き合えていなかった自社の課題は、職人が多い社内は縦割りで協調性がないこと。技術がすべての職人の世界はトップダウンで指示が下りていくため、若手は意見を出しにくい社風になっていました。そこで自走する組織をめざして新たに組織コーチングを取り入れ、会社のことを自分事として捉えてほしい10名を選定しました。ここでは全員に意見を出してもらって合意を取りながら、めざすビジョンを「社員全員がみんなに自慢できる四国№1の鉄工所」と掲げました。
ゴールに向けて進む中で気づかされたのは、会議で口を挟む経営者の行動が自然と社長の理想を社員に押し付け、社員自身の考える力を奪っていたこと。同時に、経営者として社員を信じきれていなかったことにも気づきました。社員を心から信頼して任せて、承認と賞賛の中で会議を進めると、どんどん今までになかったアイディアが出てくるようになり、その社員たちの姿に少しずつ組織が自走し始めていることを実感しています。
「経営者がよい会社づくりに真剣に向き合い、地域に貢献して挑戦していける会社が増えれば、未来の徳島は子どもたちが住みやすい地域になっています。そしてこの挑戦は、経営者が諦めた瞬間に終わる」と語る岡本氏。「今は自社の経営にとことん向き合い、まずは苦しいことも含めて社長として経営を楽しみたい。そして50代になったらこの街を変えたい。過疎地で「この地域には何もない」と言う人は多いが、何もないなら仲間である社員と一緒に自分たちが作っていけばいい。キャプテンとナインが一丸となったチームで、四国№1の鉄工所をめざす!」と熱く話しました。
| 穴吹鉄工(株) | |
|---|---|
| 創業年 | 1965年 |
| 資本金 | 1,000万円 |
| 従業員数 | 33名 |
| 年商 | 10億8,900万円 |
| 事業内容 | 建築・鉄骨・加工業 |
| 住所 | 徳島県美馬市脇町大字猪尻字道犬61-4 |
| 電話番号 | 0883-52-1736 |
| URL | https://anatetsu.co.jp/ |










