
(株)シマブン 取締役CSO 島 英雄氏(佐賀)
1871年創業、155年の歴史を刻む(株)シマブン(島英雄取締役CSO、佐賀同友会会員)。樹脂製グレーチングという、一見地味に映る製品に特化した国内唯一の専門メーカーです。全国47都道府県と海外6カ国に販路を持ち、売上高は約5億1,600万円。従業員39名、平均年齢39歳と数字だけ見れば堅実な会社ですが、その数字には裏側がありました。
社員と向き合う

2021年以降、会社は大きな転換点に立っていました。島氏が入社し、事務所の改装や歴史の掘り起こしなど、外から見える形の改革は着実に進んでいました。しかし、同時期に2年間で12名が退職。40名余りの会社にとって、重い現実がありました。誤解を放置する文化、対話の不足、役員としての自覚の甘さ。優秀な営業担当者との行き違いを解消できないまま見送った経験が、自身に問いを突きつけました。「強くあること」より「向き合うこと」を島氏は学びました。
そこから始まったのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定のプロジェクトです。社内から選ばれた8名と外部支援者が集まり、ミッション・ビジョン・バリューを一から対話で作り上げていきました。意外なことは、その出発点が「経営の恣意性を抑えたい」という、ある意味で後ろ向きな動機だったことです。議論を重ねるうちに空気が変わっていき、社員一人一人が「会社を変える主体」だという認識が、自然と育まれていきました。
策定されたミッションは「価値を作り続け、未来の笑顔をつくる」。経営者自身が提案した案は採択されませんでした。しかしそのプロセスを尊重したことが、むしろ信頼の土台になりました。MVVとは社員を縛るスローガンではなく、意思決定の共通言語です。その理解が少しずつ、組織の中に根を張り始めています。
小さな変化を大切に

事業の面でも、挑戦の芽は出てきています。樹脂技術という本業の強みを軸に、プールサイドや建築分野での安全性向上提案、老朽化インフラへの対応、防災・減災ニーズへの応答。社会課題と向き合う形に、営業のあり方そのものを変えようとしています。若手社員が自ら新規市場の調査を提案し、それが製品改良に結びついた事例も生まれました。小さな変化かもしれませんが、その一歩がとても大きなものとなっています。
働く環境づくりも同様です。対話をすぐに実践すること、役割を明確にすること、基本的な問いに即答できる経営体制を整えること。若手が挑戦できる機会を増やし、多様な人材が活躍できる風土を作ること。どれも派手ではありませんが、地道で誠実な積み重ねを続けています。
事業承継者の「覚悟」は、一夜にして完成しません。問い、言語化し、行動し、その結果と向き合う繰り返しの中でしか、経営者は育たないのかもしれません。155年の歴史を持つ企業が今、次の10年に向けて社員とともに歩み始めています。
「覚悟や経営姿勢を問われても、経験や機会の大きさで完成形を語れば語るほど陳腐なものになる。完成形を誇るのではなく、進化し続けることを選んだ会社づくりをもっと追いかけたい」と、島氏は覚悟を決めました。
| (株)シマブン | |
|---|---|
| 創業 | 1871年(明治4年)、155年目 |
| 売上高 | 約5億1,600万円 |
| 従業員数 | 39名(平均年齢:39歳) |
| 事業内容 | 樹脂製グレーチング(建築資材、プールサイド等に使用)に特化した樹脂専門の国内唯一メーカー。販売網は全国47都道府県・海外6カ国 |
| 住所 | 〒849-0112 三養基郡みやき町江口2488-5 |
| TEL | 0942-89-5235 |
| URL | https://shimabun.jp/ |










