【第32回】組織変革でめざす「働きたい仕事」 (株)ヒルズ伊勢崎 代表取締役 石原 秀樹氏(群馬)

(株)ヒルズ伊勢崎 代表取締役 石原 秀樹氏(群馬)

 「誇り・尊厳・自己実現」3つのキーワードを経営理念に掲げ、介護付有料老人ホーム、小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援事業所などを運営する(株)ヒルズ伊勢崎(石原秀樹代表取締役、群馬同友会会員)。スタッフの約7割が国家資格保持者で、高い専門性のもと「最期まで自分らしく暮らしたい」という願いを支えています。

事業承継、急ぎ過ぎた変革

 石原氏が同社に入社したのは2016年、先代(父)からの「会社を助けてほしい」との電話がきっかけでした。建築業界で現場監督として組織をまとめていた当時、数字や工程管理、組織マネジメントに自信はあったといいますが、いざ入社するとこれまでのキャリアからは考えられない惨状が目の前に広がっていました。

 あいさつも服装もバラバラで、利用者(お客さま)への言葉遣いなど、石原氏が想像する組織とは程遠い状況でした。「福祉だから仕方ない」その甘えに強い違和感を覚え、自分が変えるしかないという使命感から、制服の導入、就業規則の見直し、言葉遣いなど猛烈なトップダウンで組織を締め上げました。3年間で形は整い、売り上げも安定したものの、出来上がったのは、息苦しさが漂い指示がなければ動けない組織でした。

組織が変わる兆し

 大学で福祉を学び直す中で「ピアサポート(同じ悩みや背景を持つ者同士が支え合うこと)」の考えに触れた石原氏は、障害者が認知症の方に寄り添う「新しい支援の形」ができないかと考え始めます。そんな折、地元の特別支援学校から雇用の依頼が飛び込みます。この頃はまだトップダウンで組織が動いていましたが、石原氏は独断せずに社員に障害者雇用に対する思いを伝えると「やってみたい」という声があがりました。トップダウンで動く組織から、社員が自分の意見を言える組織へ一歩踏み出せた瞬間でした。

障害者雇用で加速する組織変革

 当時の介護現場は、何をするにも手書きで記録を残していました。しかし、障害者の方は文字を書くのが苦手でした。そこで、タブレットを導入し、介護記録を選択式のボタン入力に変え、作業マニュアルを極限までシンプルにすることで、誰が見ても一目でわかるように仕組みを変えたといいます。簡素化された仕組みは、結果として職員全員の負担激減につながり、記録にかかる時間は10分の1に削減され、利用者と向き合う本来の仕事に割く時間が増えました。障害者のための取り組みが、全員の効率化につながりました。「障害者は組織の見えない不備を映しだす。彼らが働きにくいということは、実は健常者にとっても課題の残る職場ということ。障害者雇用が組織変革を加速させた」と振り返ります。

現在の組織と介護職の未来

 2025年、先代の逝去に加え、10年来の幹部社員が親の介護を理由に退職。組織の要を失う不安の中「私たちがやります。社長は一人じゃない」と、社員が声をあげ組織を動かし始めました。みんなで考えてみんなで支える「フラット」な関係に転換した瞬間でした。今では障害者も、ベテランも新人も全員がパートナーとして、理念という軸のもとに動く組織へと様変わりしました。

 その組織づくりが認められ、女性の活躍を応援する「群馬県いきいきGカンパニー」ゴールド認証、「ぐんま介護・福祉人材育成認証事業者」「障害者雇用中小事業主認定(もにす認定)」「介護職員の働きやすい職場環境づくり、厚生労働大臣奨励賞」など、数多くの認定・表彰を受けています。

 石原氏が働きやすさを追求する背景には「女性の働きたくない仕事ランキング」があり、介護士と対照的な位置にいる「客室乗務員(CA)」を例にあげ「求められるスキルは変わらず、国家資格(介護福祉士)も必要なのに報酬が低い」と訴えます。社会保障制度を支える誇り高い仕事として、介護職の魅力向上を推し進め「働きたい仕事」としての上位ランクインをめざします。

(株)ヒルズ伊勢崎
創業 2003年
従業員数 49名
事業内容 介護施設の運営
住所 群馬県伊勢崎市美茂呂町4512-1
TEL 0270-21-1345
URL https://hiruzuisesaki.jp/