
(有)川藤 代表取締役 川村 正太郎氏(岩手)
アメリカに渡り、2年かけて大陸を横断
(有)川藤は管工機材の総合卸商社で、四代目社長の川村正太郎氏(岩手同友会会員)は、高校卒業後そのままアメリカに渡り、放浪の旅に出かけます。約2年間の滞在の中で、アメリカ大陸を西から東まで横断し、言葉がまったく通じない中、さまざまな国の方々に出会い、「人は一人ひとり、誰もが違う」ことを学びます。その経験は後に経営者として責任を担ったとき、大いに役立つことになります。
帰国後は、仕入先企業で約6年間の修業を積みました。そして28歳で盛岡へ戻り川藤に入社、専務取締役に就任します。しかし修行時に勤めた会社とのあまりの危機感の違いに、「このままでは会社が駄目になってしまう」と自分の中に密かに決意するものがありました。
危機感から申し出た「社長交代」

同社は1963年に川村氏の祖母が創業し、創立64年目となります。一貫して「現場を止めない営業」に努め、地域で暮らす人々の日常を支え続け、「困ったときの川藤」と言われるようになりました。
しかし、売上こそ好調だったものの、めまぐるしく変化する社会情勢や外部環境への素早い対応が必要だと思い、川村氏は当時の社長(三代目・叔父)と父親(二代目社長)に社長交代を申し出ました。
二人とも最初は驚いたものの、川村氏の強い決意と将来に対する覚悟を理解し、その決断を受け入れ2024年に社長に就任することになりました。
もがきながらたどり着いた経営指針
新たな展望を求めてさまざまな文献を読み進める中で、地域経済が自立して循環する「自治経営」という考え方に出合います。しかし、その考えを自社経営へどう落とし込めばよいのか分からず、悩み続けていました。
深めれば深めるほど、自社の仕事とまちづくりを結びつける指針の必要性をより強く感じ、自分で経営指針を作ろうと試みました。しかし形式上はできましたが、本当に自分の頭で考えて作らないと意味がないということに気づきました。
そんな中、「同友会に入れば経営指針が学べる」そんな話を耳にし、半信半疑で岩手同友会へ入会しました。そして入会直後に「第18期人を生かす経営・経営指針実践塾」に飛び込みます。そこで待っていたのは、自分が長年探し続けてきた答えでした。
経営指針を作成する中で「地域とは、私たちが暮らす場所であり、そこに暮らす人であり、住む人が『ふるさと』と感じる場所。その地域で暮らす人々の日常を支え、その先にある『ありがとう』や感動を届け、元気なふるさとを実現したい」という壮大な思いにたどりついたのです。
社員のことを何よりも一番に考える社風

「社員のことを一番に考える。社員が本音で話せる環境を築くことを常に心がけている」と、川村氏の社員への思いは一入(ひとしお)です。社員の平均年齢は36歳と若く、勤続年数が長い社員ばかりです。
社員と目標を共有し一緒に考え、もし達成できないことがあれば、理由や解決策を共に考え、個々のやり方を尊重する姿勢を大事にする。定着率が高いのも、そうした社風が大きく影響しています。
しかし昨年経営指針を成文化し、初めて社内発表するときには、社員からは戸惑いの声がありました。社員には「どうしてこの言葉になったのか」など、納得するまで何度も丁寧に説明し、理解してもらうまでになりました。
今では「私たちの将来を考えてくれている」という感謝の声が聞かれるようになりました。今後は、「社員が自分ごととして会社の未来を考えられるよう、各部門の目標設定にも社員を巻き込んでいくことで、会社全体のベクトルを合わせ、組織力をさらに深めていきたい」と、川村氏は話します。
地域に若者の受け皿となる魅力ある企業を増やしたい
四代目として事業を承継した川村氏は「私たちはただの管材屋ではなく“管材卸”という手段を使い、地域を思いやりでつなぎ、日常の暮らしとその暮らしから得られる喜びを提供してきました。その思いを大切に、地域で暮らす人々の『持続可能な暮らし』と『幸せな笑顔』を支えていきたい」と話します。
そして未来に向けて、県外に出た若者が将来地元に戻って働きたくなる企業を増やす取り組みも、同業のメンバーに呼び掛け、始めています。 若者の「受け皿」を増やすために、地域になくてはならない企業をたくさん増やす取り組みです。「一社ではできないことを、皆の連携、連帯で実現したい。そのために自分の経営者人生をかけたい」川村氏の壮大な取り組みはまだ始まったばかりです。
| (有)川藤 | |
|---|---|
| 創業 | 1963年(昭和38年) |
| 資本金 | 1,200万円 |
| 従業員数 | 19名 |
| 事業内容 | 住宅設備機器卸売、建築設備機器卸売、配管機材卸売、オストメイトトイレ「パウチクリーン」の開発・販売 |
| URL | https://www.kawato.jp/ |










