【第10回】ゆっくり構えている暇はない! (株)タケノ 代表取締役 竹野 孔氏(福岡)

 竹野孔代表取締役

(株)タケノ 代表取締役 竹野 孔氏(福岡)

 (株)タケノ(竹野孔代表取締役 福岡同友会会員)は1976年に福岡市博多区で小さな焼鳥屋として創業し、現在は居酒屋「竹乃屋」をはじめとする12業態40店舗以上の外食店舗を主に経営しています。
 1995年に同友会に入会し、翌年に経営指針作成セミナーに参加。そこで焼鳥屋から居酒屋への転換や多店舗展開など「拡大」のきっかけをつかみました。拡大を続けるに伴い、組織づくりも同友会で大いに学びました。

完璧よりもスピード

博多ぐるぐるとりかわ

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2020年2月から3月までに2万人の予約キャンセルがあり、損失は約1億円、3月の売上は対前年同月比20%まで落ち込みました。駅近の立地が多く、主に会社員をターゲットにしている竹乃屋にとって、歓送迎会シーズンの大打撃でした。眠れない日もあったという竹野氏は、すぐにオンラインショップの立ち上げ準備を始めます。そして同年4月、竹乃屋オンラインショップを開設。当初は着払いのみで、クレジットカード決済もできないという不完全な状態でした。「クレジットカード決済の申請手続きすら待てない状況でした」と当時を振り返ります。
 竹乃屋名物「博多ぐるぐるとりかわ」は、1カ月で15万本を売り上げるなど好スタートを切りました。現在は焼鳥やハンバーグ、お刺身やスイーツまで、全国各地へ竹乃屋の味を届けています。
 また、当時資金調達を急いだ竹野氏は、実質無利子・無担保融資の報道が出てすぐに金融機関に相談しました。まだ詳細な通達が出る前に相談に行ったため、金融機関側も困惑していましたが、準備が整うとすぐに連絡がありました。日ごろの金融機関との関係性も大事だと痛感します。

社員全員雇用は守る

焼とり重定食

 全店休業をやむなくされましたが、すぐに社員へ「心配しなくていい、雇用は必ず守る」と発信しました。アルバイトも含めた当時1,000人ものスタッフ全員に給料補償を約束し、現在も続けています。飲食業界は経営不振と連日報じられるため、社員から不安の声もあると言いますが、竹野氏自らグループウェアを通じ、全社員にメッセージを発信し続けています。役を与え経験を積むことで人は一番成長する、と考える竹野氏は、社員のためにも事業拡大を続け、新たな挑戦の場を創り出しています。

挑戦すれば答えは二つ 「成功」か「学び」か

 2020年4月から現在までに、タケノグループでは、通販、催事、食物販、フランチャイズ、発酵食品、ヘルスケアの6つの新規事業を立ち上げ、ヘルスケア事業は2021年4月に法人設立しました。
 店舗事業では、テイクアウト、定食の提供、ノンアルコールドリンクの充実、ファストフード店など、業態を転換させ、コロナ禍のなか12店舗を出店し、さらに10店舗の新規出店を計画しています。「今、こんな時に誰も出店しません。だからこそ好立地に好条件で容易に出店できます。今こそ出店の時期だと思います」と竹野氏は話します。 

意思決定の連続~判断ではない~

 (株)タケノは、コロナ禍が長引く現在でも経営を維持できるよう、業態と業界の多角化を行ってきました。「未曾有の事態で、判断材料というものがまったく無い中、意思決定をし続けていかなければなりませんでした。こんな時に拡大し続けるのはもちろん怖い。銀行からも心配されています。しかし、とどまっていても縮小しても店はつぶれる。それなら挑戦したほうがいい。また、コロナ禍を経て思ったことは、たくさんの地域のお客様やご縁のある方に支えられて、私たちはビジネスができているということでした。現在は、営業再開へ向けて、社員とともに面白いイベントを考えています。お客様に喜んでいただきたいのはもちろん、社員の士気高揚にもつながると考えています」と語る竹野氏の歩みは止まりません。

会社概要

創業:1976年
資本金:3,000万円
事業内容:居酒屋など飲食店経営
従業員数:正社員123名(他パートアルバイト888名)
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅南4-18-27
URL: https://www.takeno.co.jp
オンラインショップ:https://takenoya.online/