【第38回】「社会を明るく照らす」照明演出企業の挑戦 (株)ファーストディレクションTAKEKICHI 代表取締役 木本 康大氏(岡山)

(株)ファーストディレクションTAKEKICHI 代表取締役 木本 康大氏(岡山)

 (株)ファーストディレクションTAKEKICHI(木本康大代表取締役、岡山同友会会員)は、主に商業施設や観光地のイルミネーションなどの屋外演出照明を扱う会社です。2017年の創業以来、岡山城や西川緑道公園といった岡山を代表する観光名所の照明演出を次々と手がけ、またたく間に県内有数の照明演出企業に成長しました。その一方で、閉鎖された海水浴場の「海の家」を改装したグランピング施設をブームに先駆けていち早くオープンするなど、ニッチな領域のユニークな活動が県内外の大きな注目を集めました。

事業の見直しでピンチをチャンスに

 ところが、20年に感染症が拡大したことでライトアップやイベントが軒並み中止になり、グランピング施設もキャンセルが相次ぎました。木本氏は「このままでは会社がつぶれる」と強い危機感を抱き、金融機関の担当者と一緒に社業の抜本的見直しに取りかかりました。議論に議論を重ねた結果、最終的にたどり着いたのは『場所だけではなく、人の心も明るくする』という自社の経営理念に立ち戻ることでした。そして、感染症がもたらした人々の暗澹(あんたん)たる気分を明るくすることを目的に掲げ、照明演出部門を強化するとともに、ピクニックをテーマにした軽食中心の飲食店「ポラリス」の出店を決めました。

 周囲には、感染症の収束が見通せないタイミングで飲食店を開業することを心配する声もありましたが、木本氏には「来訪者の多い観光地の近くでテイクアウトを中心にすれば、一定の収益は確保できるだろう」という目算がありました。また「感染症が落ち着いた後では、こんな好立地に出店するチャンスはめぐって来ない」という思いもありました。社員総出で店舗の内装に取り組んでいるうちに、キャンセル続きで沈みがちだった社員たちにも笑顔が戻ってきたと言います。

 一方、外出制限の最中であっても感染リスクが少ない屋外イベントに人々の注目が集まり始め、夏ごろからは問い合わせが急増。先行投資として大規模イベントに対応できる機材とLED照明を追加購入していたことが奏功し、照明部門でも大量の仕事を受注することができました。

社員と共に企業変革

 その後も次々と新しい挑戦を続け、21年には店舗や社屋の看板デザインやラッピングカーを手がけるサイン部門を新設。また照明部門の支店を石川県津幡町に新設し、活動範囲も拡大しました。組織改編にも着手し、運営管理部門を設けて経費の見える化などを推し進め、22年には営業利益の黒字化を実現しました。平行して就業規則の見直しも行い、働きやすい環境づくりも進めました。今春は社屋のリフォームにもとりかかりました。

 コロナ禍で大打撃を被りながらも、事業を縮小するどころか、理念に立ち戻って積極的な攻めの姿勢で新しい領域を開拓した木本氏ですが、「どれほど仕事がたくさんあっても、社員がいないと何もできない」と語ります。そのため、今後は積極的に採用を行い、同友会の社員教育プログラムを活用しながら自主的な社員を育てていきたいそうです。

 現在、グランピング施設はコロナ前の8割程度まで客足が戻り、ポラリスの売上も観光需要の回復に伴って増えつつあります。ファーストディレクションTAKEKICHIは、これからもより多くの人々の心を明るく照らすため、新しい企業変革に挑戦し続けることでしょう。

会社概要

設立年 2017年
資本金 100万円
従業員数 14人(パートアルバイト含む、役員除く)
年商 9,800万円
事業内容 イベント催事における照明演出、飲食店運営、看板デザイン及び制作施工など
住所 岡山県瀬戸内市長船町長船640 2F
電話 0869-93-4065
URL https://www.1st-dt.com/