【第4回】ダンボールに不可能はない (株)ユーシン 専務取締役 荻原 照仁 氏(山梨)

(株)ユーシン 専務取締役 荻原 照仁氏(山梨)

 (株)ユーシン(荻原照仁専務取締役、山梨同友会会員)は創業65年。果物の梱包用をメインにダンボール加工を行ってきました。積み上げた技術のもと、「ダンボールに不可能はない」をキーワードに社員と一致団結して新たな事業領域へと足を踏み出した同社に山梨同友会のインターンシップ生が訪れました。

後継者としての意識の変革

 荻原氏は、山梨同友会に入会してすぐに経営指針をつくる会に参加します。以前は社長を敵視し、その反感から孤軍奮闘していましたが、経営指針を成文化したことで考えが一変します。会社を大きくし、それを自分に託してくれた先代への感謝が生まれ、後継者として姿勢を正します。その後、社内に目を向けると、社員同士のコミュニケーションも少ないことに気づき、それを改善するための取り組みに着手します。

DX化と独自システムの開発

 まず、コミュニケーションツール「Slack」を導入し、社内の情報伝達を大幅に改善することに成功しました。社員が気軽に自分の考えを発信できるようになったほか、リアルタイムでの情報共有が可能になり、同じミスを繰り返すことがなくなりました。また、社員に組織の一員であることの自覚が芽生え、社員同士の団結力が深まったと言います。

 さらに、書面でやり取りしていた納品報告や顧客情報、図面をデータ化し、瞬時にさまざまな情報を閲覧できる独自のシステムを開発。それにより、社員間や部門間の連携が深まり、生産性が向上しました。

品質一筋とそれを可能にしている技術力

 高品質な商品よりも低価格な商品が求められる中、 ユーシンは品質にこだわって65年間ダンボールと向き合ってきました。その技術の積み重ねが高付加価化につながっています。例えば、自動ラインと手作業のラインを組み合わせて精密機器の運搬に対応できるダンボールの開発に取り組んでいます。外箱は自動ラインを活用し、緩衝材などは手作業で一点一点その製品に合うものを作成して、顧客の要望に完璧に応えます。発泡スチロールに比べ安価なダンボールで緩衝材を作ることでコストを抑えることもできます。

 また、ダンボールの特徴である軽くて丈夫なこと、長期使用には向かないことを考慮し、短期開催の展示会に商機を見いだします。展示会で使用するパーテーションやテーブルなどを木材やプラスチックからダンボールに置き換えることで、持ち運びが便利になり、一点物でも低コストでの調達が可能になります。廃棄する際も資源として再利用が可能になるため、環境保全にも貢献しています。この商品の肝は、設計・開発力です。使用するダンボールは大型で、丈夫なものですが、加工から印刷まですべてを内製化し、顧客の要望を素早く形にします。

“ダンボールといえばユーシン”に

 ユーシンの経営理念の中に「ダンボールで想いを守る」という一文があります。経営理念を社員と共有し、ダンボールはただのものを入れるだけではなく、製造者、送る人、そしてお客さまの想いを守り届けるものであり、その仕事に誇りを持っています。新体制では、ダンボールのイメージを変えることをめざしています。

 社内一人一人の意識が高まり部門間の連携が密接になったことで、社長や荻原氏が現場にいなくとも会社が回るようになり、新規営業に専念できるようになりました。この間、関東甲信越青年経営者フォーラム実行委員長として外に出る機会が多くなったことが大きな要因で、振り返ると役得の一つだったそうです。「まだまだこれから。システムや組織を見直し続け、チャレンジすることを大切にしていきたい」と荻原氏は語ります。社員と一丸になり、“ダンボールといえばユーシン”をめざして、同社の挑戦は続きます。

(この記事は山梨同友会事務局インターンシップ生が執筆し、事務局が編集しました)

(株)ユーシン
設立年 1978年
資本金 1,000万円
従業員数 30名
年商 5億円
事業内容 ダンボール箱、化粧箱、ダンボール家具等、加工製品の製造
住所 山梨県都留市玉川字前河原632-1
電話番号 0554-43-2567
URL https://www.ushin-net.co.jp/