【第5回】働きやすさ+やりがい=働きがい追求の経営実践 城北電気工事(株) 代表取締役 伊藤 誠氏(山形)

城北電気工事(株) 代表取締役 伊藤 誠氏(山形)

 城北電気工事(株)(伊藤誠代表取締役、山形同友会会員)は山形市で60年以上にわたり電気工事業を営んでいます。代表取締役の伊藤誠氏は2010年に同友会に入会し、2019~2021年には支部長を務めました。そして、経営指針、委員会などの同友会の学びと共に、社員が働きがいを持てる会社づくりを進めてきました。

自主的に育つ環境づくり

 伊藤氏は入会の翌年に経営指針作成セミナーを受講しましたが、そこから指針を基に経営しているはずなのに数年経っても退職者が減りませんでした。伊藤氏は「賃上げできればいいはずだ。給与を上げる方法を学ぼう」と考え社員共育委員会に参加しますが、そこでの「社員が育つ環境はあるんですか?」という指摘にショックを受けます。そこから社員共育委員会をはじめとする同友会での学びから、自社の最大課題を「社員の個性を尊重し、自主的に育つ環境づくり」と位置づけました。

 今も大切にしている取り組みの一つが階層別教育で、技術や知識だけでなく、考える力や部下とのコミュニケーション力など、立場ごとに必要な人間力を身に付ける内容としています。当初社内では抵抗もありましたが、年度で受講計画を決めて、同友会の社員研修用シートを応用し成果発表の場を設け、社員が成長できる場になったことで次第に浸透しました。

自分たちで働きやすい会社をつくる

 自主性を育む組織づくりにも力を入れており、改善提案の場として実施しているのが「提案プロジェクト」です。これは社員にチームを組んでもらい、社内の改善案を社長にプレゼンする企画で、仕事の不満を社員が自主的に洗い出して改善点を考えることで、実態に即した業務改善と主体的な社風づくりに生かされています。伊藤氏は「ハインリッヒの法則は退職にも当てはまる。退職そのものでなく、一人の退職の背後にある29の不満、その背後にある300の『退職のヒヤリハット』をなくしていきたい」と語ります。

やりがいの追求

 伊藤氏は「働きやすさ+やりがい=働きがい」と考え、やりがいの追及にも取り組んでいます。

 以前は法人・公共の仕事が中心でしたが、民家の小規模工事の隠れた需要に気づき、一般家庭向けサービス「孫の手隊」をスタート。事業としては小規模ですが、顧客に直接感謝される業務で社員がやりがいを実感できる機会になっています。

 2021年から伊藤氏と前山形支部長の服部氏(㈲山形商美社代表取締役)が中心となって開催する地域イベント「願いちょうちん やっしょまかしょプロジェクト」では、山形市中心部に城北電気工事が配線するちょうちんが並びます。その作業には、地元の工業高校生も参加しています。高校で取得した技術を生かしてちょうちんの光で街を彩る体験は、地域の若者に電気工事業のやりがいを伝える機会にもなっています。実際に、この企画で参加した高校生1名、職業体験でこの現場に立ち会った高校生1名が入社しています。

 現在の女性社員比率は25%と以前から大幅に上がり、女性が活躍できる企業づくりが急務です。また、2年前に事務社員として採用した2名が入社後に電気工事士の資格を取得しており、現場社員の作業後の事務負担軽減に活躍してもらうことをめざしています。

最後に

 伊藤氏は「同友会の学びは『この問題にはこの解決法』と単発的なノウハウを得る場ではなく、さまざまな学びを深めることで有機的に結びつき、本質的な課題を解決できるもの」と今までの実践を振り返ります。今後も城北電気工事は地域に必要とされる働きがいのある企業づくりへ挑戦し続けます。

城北電気工事(株)
設立 1961年
資本金 1,000万円
従業員数 22名(役員除く)
年商 2億3,000万円
事業内容 電気設備工事および配電工事
住所 山形市城西町4-5-37
電話番号 023-644-4176
URL https://johokudk.jp/