(有)いせや写真館 代表取締役 西田 晃三氏(兵庫)
事業内容および企業の沿革
西田晃三氏((有)いせや写真館代表取締役、兵庫同友会会員)は、写真業を先代の父から引き継いだ3代目社長です。いせや写真館では、2010年2月から貸衣裳ぽえむという店名でネット貸衣装業をスタートさせ、留袖・色留袖・振袖・訪問着・七五三用などを全国に宅配にて貸し出しています。豊富な品揃えと他にないサービスはお客さまから絶大な支持を受けており、現在は貸衣裳業が売り上げの約9割を占め、ネット貸衣装業において大手の一角を担っています。
写真業とのシナジー効果
ネット貸衣装業では、ネットでの自社サイトの検索順位を上位に維持することが、注文数を確保するうえで重要です。通常、ネットで検索順位を上位に維持するには、高額な広告費がかかります。貸衣裳ぽえむでは、開業当初、できるだけ広告費を抑えるため、口コミを狙って、お客さまにフォトブックをプレゼントする企画を行いました。写真業を営んでいるいせや写真館だからこそできるサービスと言えます。このサービスが貸衣裳ぽえむの躍進の原動力となりました。
最近では、フォトブックだけでなく、スライドショーのプレゼントも行っています。スライドショーは、お客さまからフォトブック作成時に提供された複数の写真データを1枚1枚スライドさせて表示する動画データです。制作コストがかからず手間もかからないスライドショーをプレゼントしたところ、コロナ禍でも七五三などのお孫さんの写真を両家の祖父母にすぐに見せることができてよかったとか、スライドショーを見て感激したなどといった感想がお客様から寄せられるようになり、リピーターの増加につながっています。
障害者雇用で醸成された援けあう社風
いせや写真館では、現在2名の障害者を雇用しています。30代で生まれつき耳が聞こえない聴覚障害があるAさんと、去年特別支援学校を卒業した10代で知的障害があるBさんです。
障害者雇用をするきっかけとなったのは、兵庫同友会障がい者委員会が実施した地元の特別支援学校の見学会に参加したことです。それまで西田さんは障害者に対してネガティブなイメージしか持っていませんでした。見学会に参加して、一心に作業に取り組むそのピュアな姿に触れ、障害者に対する考え方が変わりました。見学会のおかげで先生や就労支援の方とつながることができ、そこから企業見学や実習受け入れを行った結果、雇用に至りました。
手話教室を開いて社内でのコミュニケーション力を高める努力を進めていく中で、Aさんは「積極的にサポートしてくれてありがたい。できることは何でも挑戦したい」と意欲を見せ、パソコンの入力作業だけだった仕事内容が、インターネットでメッセージをやり取りする「チャット」や筆談用の電子メモなどを駆使し、今では貸衣装の受注管理の補助やWEBページの編集も行っています。Bさんも最初は貸衣装のメンテンナンスだけでしたが、「スタッフが優しく、質問もしやすい」と職場に溶け込み、貸衣装の梱包と発送など仕事の幅が広がっています。それぞれの特徴や得意分野を生かした仕事の割り振りなどが高く評価され、今年6月に「もにす認定」(障害者雇用に関する優秀な中小事業主に対する認証制度)を受けました。
車いす利用者にも「思い出づくり」を提供したい
いせや写真館では今年、車いすの利用者が着ることができる振袖と紋付を開発しました。車いす利用者の方から問い合わせがあり対応しようとしましたが、従来の商品ではどうしても着付け技術が必要でした。それでは、「思い出づくりのプロ」である自社で開発しようと試行錯誤を重ね、着付け経験がない家族でも短時間に着せられるよう上下を分けるなどさまざまな工夫を凝らした商品が出来上がりました。着用者や家族からも好評で、「日本だけでなく、外国の方にも着ていただける機会をつくっていけたら」と意欲を語ります。
これからの展望
ネット貸衣装業の躍進から、「自社のアイデンティティでもある写真業があるからネット貸衣装業がある」を実感した西田氏。今後は、「ネット貸衣装業があるから写真業がある」を実現していきたいとのこと。写真業とネット貸衣装業とが互いに補い合い、お客さまの諦めていた思い出づくりを叶うに変えていくことで、さらに事業を発展させていきたいと力を込めました。
(有)いせや写真館 | |
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設立 | 1987年10月2日 |
資本金 | 1,000万円 |
年商 | 3億5,000万円 |
事業内容 | 写真業、ネット貸衣装業 |
従業員数 | 32人(正社員8人、パート社員24人) |
所在地 | 兵庫県洲本市海岸通2丁目5-25 |
電話 | 0799-24-0893 |
URL | https://www.iseya-photo.com/ |