【第17回】新事業は自社の得意分野から (株)エヌワイビー 代表取締役 山﨑千弘氏(長野)

(株)エヌワイビー 代表取締役 山﨑千弘氏(長野)

 (株)エヌワイビー(山﨑千弘代表取締役、長野同友会会員)は、長野市でイタリア製製菓機械の輸入販売、厨房用機械・器具、洗浄機などを販売する会社です。現社長の山﨑氏の父が1983年に創業、2014年から山﨑氏が代表取締役となりました。

街の製菓店に寄り添って お客さまの声を聞く

 街の製菓店・製パン店を顧客にして経営を続けてきましたが、業界の状況としては、昨今の働き方改革や原材料高騰などによって厳しい経営環境下にあり、設備投資を抑える傾向にあります。また、輸入機械の販売を手掛けていることもあり、仕入れの段階で為替の状況にも大きく影響を受けています。

 山﨑氏は、2011年の震災を機に、「一つの事業に頼っていては、何かでダメになったとき、みんなダメになってしまう」と考え、他の事業を立ち上げることを考え始めました。情報収集を重ね、さまざまな新規事業を検討してきましたが、他業種に参入するより、やはり自社の得意分野である食品関係に的を絞って取り組もうという結論に達しました。これまで機械の販売の際にお客さまの声をダイレクトに聞いてきた経験の蓄積を生かし、「いつかは自社製品で」という思いもありました。

 そんな中、受講していた信州大学工学部と長野市の食の研修会の中で、新しく「機能性表示食品」の制度が始まる情報を得ました。当時中小企業ではまだ取得しているところは少なかったのですが、チャレンジを決めました。そして生まれたのが、食べて体脂肪を減らすチョコレート「Hips」です。チョコレート製造のノウハウと、自社のお客さんとかぶらない、機能性表示食品のマーケットへの挑戦です。健康志向が高まっている現在、おいしさに加えて健康にも寄与する食品を作りたいとの思いで開発しました。

新しいマーケットへの挑戦

 販売は2020年9月にスタート。初めは売り先がなく苦労しました。翌年、コロナ禍でスペースを減らしていたデパートのバレンタインフェアに出展、また異分野と思っていたスポーツ関係の展示会にも出展し反響がありました。3年目には、通販、テレビショッピングなどへ販路を拡大し、好評を得ました。現在はチョコレートの輸入価格の高騰などもあり、厳しい局面もありますが、今後はパッケージ変更・ブランディングの再構築に取り組み、海外展開なども視野に入れています。

 また、定期的に行政の担当者とも情報交換を重ねる中で、郷土野菜のアイスクリームの開発も手がけました。近いうちに展示会で試食を提供し、自社の商品開発力や県内顧客の掘り起こしにつながればと期待しています。

動かないとヒントはもらえない みんなと共有する

 このように、アンテナ高く外部からの情報を得て経営に生かしている山﨑氏は、「動かないとヒントをもらえない」と語る言葉通りに、同友会では支部の会合だけでなく、全国交流会や代表者会議にも積極的に参加しています。支部ではお互いに相手の背景なども承知したうえでの討論となりますが、全国の交流会では、初対面の会員からの指摘で「自社ではできない」という固定観念を考え直したり、社会情勢についての新しい情報から今後を考えるヒントを得たりすることもあります。

 以前は、厳しいときは余裕がなくなり一人で閉じこもりがちでした。今はそういうときこそ一歩立ち止まって周りをよく見ること、自分一人で考え込むのではなく、みんなに共有し、一緒に考える、みんなの力を借りることが必要だと考えています。

(株)エヌワイビー
設 立 1983年5月
資本金 1000万円
事業内容 食品機械卸販売、機能性表示食品Hipsの製造・販売
従業員数 21名
所在地 長野市アークス9-3
TEL 026-224-1128
URL https://www.nyb.co.jp/