
(株)レイジックス 代表取締役 敬禮 匡 氏(北海道)
敬禮氏((株)レイジックス代表取締役、北海道同友会会員)は、創業当初の成功とその後の困難を経て、共同求人活動の本質を理解し、自ら変革の道を歩んでいます。
同友会で真っ当な経営に気づく

1996年に産地直送のインターネット販売を主軸として創業した同社は急成長を遂げます。しかし、ネットショップが乱立して次第に業績が悪化し、敬禮氏はその要因を社員の能力不足とみなします。また、「自分だけが正しい」という誤った信念にとらわれていました。2006年に同友会に入会したものの、最初の数年間は会費を支払うのみの「幽霊会員」でした。しかし、業績悪化により債務超過に陥り、金融機関の支店長から厳しい忠告を受けたことで、ようやく真っ当な経営の必要性に気づきます。真っ当な経営をするためによい経営者になる必要があると理解したものの、その具体的なイメージがつかめませんでした。そこで、2009年に同友会大学の受講を決意。同大学で、地域と社員と共に生きる会社をめざす同友会型経営を学び、経営の本質が「人を生かす経営」にあることに気づきます。
社員の提案が業態を変えた

敬禮氏の考えが変わり始めたころ、新入社員から「期待を超える海鮮丼を提供したい」と提案を受けました。これをきっかけに、インターネット販売の片手間として始めた「どんぶり茶屋」で、調理を通じて食に付加価値を加え、海鮮丼のオンリーワンカンパニーをめざすことを決意します。社員の中にはパソコンを包丁に持ち替え、顧客を感動させる海鮮丼の創作に取り組んだ者もいます。他の社員たちも真剣に「一生に一度の海鮮丼」を追求し、会社全体が変わり始めました。敬禮氏も通信販売事業からの撤退を決め、以前の「お金や地位を得るために会社を大きくする」という考え方を改めます。三井アウトレットパーク札幌北広島への出店は、当初は困難を極めましたが、社員が一丸となって考案したメニューや仕事への誇りと責任を持つことで、企業価値が大いに向上しました。また、新千歳空港店の開店では、東日本大震災の影響で一時は倒産寸前まで追い込まれましたが、社員の自主的な行動と敬禮氏の「社員を信じる」という信念が支えとなり、見事に困難を乗り越えることができました。
新卒採用は自社を映し出す鏡

新卒採用においては、大きな壁が立ちはだかっていました。飲食業界は「ブラック企業」といった固定観念が広く浸透しており、その悪い印象から、学生に魅力を伝えることが難しかったのです。
敬禮氏は改めて同友会で学び、新卒採用は自社を映し出す鏡だと気づきます。①労働時間、休日、就業規則、福利厚生など、若者にとって魅力的な働く環境を提供できているか、②キャリア形成や企業のビジョンがきちんと伝わっているか、③経営者として社員への思いや考え方が誠実で正しいものか。これらを鏡に映し出すのが共同求人活動の大切なポイントであり、「人を生かす経営」の考え方であることを再認識します。
まずは、「飲食業=ブラック」というイメージを払拭するため、就業規則を見直し、労基法令の遵守を徹底しました。過酷な労働や休日返上を排除し、有給取得を推奨する方針を打ち出しました。また、社員を大切にする姿勢の一環として、誕生日祝いを新たに取り入れ、社員一人一人への感謝と敬意を示しました。
これらの取り組みを通じて、社内の雰囲気が改善され、会社の魅力が学生に伝わりやすくなりました。
共同求人活動から自社を進化・深化・新化させる

2014年から年度方針の社内発表を始めました。社員が成功を実感し、モチベーションをアップしてくれれば結果は必ず出ると考え、数値目標は設定していません。また、「協力評価」でチームを評価し、社員一人一人を「成長評価」で行う「チーム・レイジックス宣言」も発表しました。協力評価を浸透させるために社員理念「チーム・レイジックス『5つの力』」を考え、①リーダーシップ力、②予測力、③アシスト力、④1.1力、⑤気づき力を意識し行動すると、会社の仲間から「たまごち(魂のご馳走)」がもらえると提案しました。このほかに年間社員表彰、ES・CS活動による社員からの改善提案の奨励、社員との関係を深めるために社長と1~2名の社員が個室で食事をしながら本音を語る「振る舞い飯」なども行っています。また、全社員参加型の10年ビジョン作成プロジェクトを進行中で、社員の意見を取り入れながら会社の将来像を描いています。
コロナ禍では、売り上げが激減し危機に直面しました。しかし、「社員の雇用は守る」と約束し、休業期間中に「どんぶり茶屋2.0宣言」を実行し、逆境を機に未来のビジョンを語り合い、事業の進化を進めました。
敬禮氏は「共同求人活動は、採用の手段ではなく、自社の不足に気づき進化・深化・新化を決意する活動」と語ります。経営者自身が参加し、会社変革を率先して行うことで、会社は魅力的な働く場へと変わり、若者が地域社会に残ることにも貢献できると説きます。
| (株)レイジックス | |
|---|---|
| 設立年 | 1996年 |
| 資本金 | 2,200万円 |
| 社員数 | 29名 |
| 事業内容 | 飲食店「どんぶり茶屋」の運営 |
| URL | https://raisix.co.jp/ |










