四国生コンクリート工業(株) 代表取締役 和仁 孝成氏(徳島)
四国で最初にできた生コンクリート製造会社の3代目を務める和仁氏(四国生コンクリート工業(株)代表取締役、徳島同友会会員)。
生コンクリート業界は自社から車で1時間程度の限られたエリアが商圏となり、そこから飛び出すことが難しい、まさに「地場産業」です。その地場を守ることができれば手堅い事業とも言えますが、地域が衰退すると縮退せざるを得ません。また、生コンクリートは協同組合という仕組みがあり、JIS規格に合致している商品を安定的に出せることをよしとし、新商品の開発はほとんど必要ない業界です。そんな中で新しいことにチャレンジせず、落ちていく売り上げを外部環境や天候のせいにしている業界に、もどかしさを感じていました。
急速な業界縮小と新規事業への挑戦
2008年に代表取締役に就任してからも、中長期的には人口減少や行政の財政ひっ迫で業界は今以上に厳しくなっていくだろうという危機感を抱いてしました。しかしその後、自分が想像していた以上のスピードで業界が縮小していくのを感じるようになり、ここから「脱生コン屋」を模索し始めます。
最初に取り組んだのが、同友会への入会と経営指針実践塾の受講(2010年)です。ここから火がついて、社内での指針発表会と併せて共同求人での新卒採用にも取り組みました。若手社員が増えていく中で、業界では常識となっている商圏1時間の枠組みから飛び出せる新規事業に取り組まないと、自社の未来はないと考えるようになったことが、コンクリートモービル車を使った生コン現場練り事業に着手したきっかけです。
コンクリートモービル車は、キッチンカーのようにすべての材料をトラックに積み込んで現場で製品に加工するため、ミキサー車が入ることのできない山間地や生コンプラントがない離島での供給が可能です。その他、少量多品種の特殊な生コンの製造もできます。
ライバルがいない徳島初の事業に覚悟を決めて取り組んだものの、海外製ゆえの納期の遅れと半導体不足による納車遅延、代理店やマシントラブルなど、「もう無理だ!」と思うアクシデントに何度も襲われました。
それでも諦めずに、数年かけて事業が軌道に乗ってきた要因は、若手社員が自ら担当に名乗りを挙げてくれたことです。2010年から指針発表会を続けてきた中で、社員が自分で取り組みたい仕事を主体的に選んでくれる風土が育ち、「入社してから学んできた知識を新規事業に生かしたい」と言ってくれたことで今があります。
調子のよいときに未来を予測する
しかし、事業が軌道に乗ってきた半面、課題も山積しています。成功するかどうか分からない新規事業だったため、新たな採用はせずに既存社員で進めたためにマンパワー不足を抱えています。また、このマンパワー不足が原因となって新卒3年目の女性社員が退職してしまったことで、業務量のコントロールや社内での気配りが足りていなかったことにも気づきました。
新規事業は時間と費用がかかり、その上軌道に乗るかどうかも分からないので、早めに取り組まなければいけません。今やっている事業も必ず、黎明期から成長期を経て安定期となり、衰退期という流れに沿っていると考えると、調子がいいときこそ未来を予測して対策を考えていく必要があります。
「新規事業で経営者と社員が共にワクワクできる仕事をつくり、チーム一丸となって未来を切り開き、地域と日本を活性化していきたい」と語る和仁氏の挑戦は始まったばかりです。
四国生コンクリート工業(株) | |
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設立 | 1963年9月 |
資本金 | 1,000万円 |
社員数 | 18名 |
年商 | 3億5,000万円 |
事業内容 | 生コンクリート製造・販売 |
住所 | 徳島市新浜町1丁目1番30号 |
電話番号 | 088-662-0030 |
URL | https://sunrise-inc.net/ |