【第28回】ブラック百姓から21世紀型農業へ~我・人・地域を知る時に始まる 人を生かす経営~ (株)LC FARM 代表取締役 梅村 晃太氏(佐賀)

(株)LC FARM 代表取締役 梅村 晃太氏(佐賀)

誰がための栄光か?

 梅村氏(LC FARM代表取締役、佐賀同友会会員)は大学卒業後、5年間のJA伊万里勤務を経て2015年、27歳の時に縁もゆかりない土地で妻と二人で新規就農しました。「SEIKAを実らすプラントカンパニー」をビジョンとし、目もくれずにがむしゃらに働きました。

 事業を軌道に乗せるため、まず考えたのは生産量の拡大です。人手が足りなければ機械でも何でも導入し、とにかく採用しました。ところが、本人も含め全社員が終業時にはクタクタになり、暗い顔で「明日もあるのか…」とつぶやく状況。次第に社員さん、パートさんも短期間で去っていきました。農場拡大のための融資も金融機関に渋られます。経験の薄い若者には地域の目も冷たく、気がつけば、めざしていた「SEIKA(成果)」とは程遠い状況で、まさにブラック企業の「MVPエース」を獲得するところでした。

我・人・地域から自社を知る

 そんな中、佐賀同友会に入会。「共に学び、共に育つ」をめざすべき経営姿勢とする、地域の未来を切り拓くリーダーとして果敢に挑戦し続けている仲間たちに出会います。例会や支部活動の中で、自身の経営姿勢を見直す機会を得ると、経営指針の成文化、例会での報告から自身の姿、周りの人々の暮らし、地域の未来が明確になりました。がむしゃらに働くだけではたどりつけないことに気づきます。経営指針の発表が大きな転機となり、まずは「ブラック百姓から21世紀型企業へ」というビジョンを掲げて、経営革新に取り組んでいきます。

農業の未来を見据えた経営革新

 梅村氏は、地域の農業が抱える問題に真正面から向き合ってきました。長時間労働や低賃金といった「ブラック百姓農業」の現実を変え、持続可能な農業のあり方を模索。その中で、「ヒトの多様性や可能性をどう生かすか?」という本質的な問いに向き合い、組織のあり方を再構築してきました。

 めざしたのは、経営者が他責思考を排し、主体的な姿勢を持つことで、社員の自主性を引き出す環境を整えること。「ただ作業をこなすだけではない、農業を通じて人が成長し、共に学び合う組織へ」と語る梅村氏の言葉には、経営者としての強い信念がにじんでいます。ここから月2回の社内勉強会が始まり、社員の人生の夢や志をつくるための時間を重ねていきました。

21世紀型中小企業への挑戦

 LC FARMでは、経営指針の作成と実践を通じて社員の価値観を共有し、チームとしての一体感を強化してきました。梅村氏は「組織の中で個人が成長する環境を整えなければ、農業の未来はない」とし、社員一人一人の主体性を尊重する経営を実践しています。「農業の世界においても、社員が自分の成長を実感できる企業こそが理想であり、働くことを通じて自己実現ができる環境を提供しなければ、農業の魅力は伝わらない。私たちは、社員が誇りを持って働ける場をつくる責任がある」と力強く語ります。

 生産性の向上だけでなく、社員が安心して働ける環境整備にも力を入れており、働きがいのある農業を実現するための制度設計も進めています。

未来への展望

 梅村氏は「農業は厳しい業界ではあるが、可能性は無限にある」と話します。新しい農業の形を追求し、地域社会とともに成長する企業をめざすことで、次世代の農業のあり方を示しています。

 LC FARMの挑戦は、単なる農業経営の枠を超え、企業のあり方そのものを問うています。「共に学び、共に育つ」環境をつくることが、持続可能な未来への第一歩となると語る梅村氏。現在、終業時には「白い歯を見せて」帰宅する社員が増えています。

(株)LC FARM 代表取締役 梅村 晃太氏(佐賀)
設立年 2020年
資本金 10万円
従業員数 20名(役員2名 社員7名 パート、アルバイト11名)
年商 1.1憶円
住所 〒849-4274 佐賀県伊万里市東山代町脇野4988
電話番号 0955-29-8961
会社概要 ビニールハウスを使った、胡瓜と苺の生産・販売。 青果等の小売、業務用卸売。
URL https://lcfarm.info/