【第45回】命と向き合う―企業風土の変革 (株)三和食鶏 代表取締役 稲毛田 英樹氏(茨城)

(株)三和食鶏 代表取締役 稲毛田 英樹氏(茨城)

 水と緑豊かな自然に囲まれた茨城県古河市にある1973年創業の(株)三和食鶏(稲毛田英樹代表取締役、茨城同友会会員)。稲毛田氏が47歳の時に事業承継してから8期目となり、完全週休2日制の導入や給与体系の改善など、業界では珍しい働き方改革に取り組んできました。現在は年商15億円規模の企業へと成長し、全国3番位のシェアを誇る食鳥肉の製造および販売企業グループの一角として、地域に根ざした経営を展開し、業界全体の発展にも尽力しています。

事業承継と変革の決意

 先代は経営に対する独自の計算式を持ち備えていて、視点も的確でカリスマ的存在でした。しかしそれ故ワンマンであり社員の事は二の次、社員の不満も募っていました。尊敬はしているものの、自分の世代になったらこの雰囲気を打破したいと考えているときに先代が入院、下剋上ともいえる人事により事業承継を行います。先代の創った理念にワクワク感を感じられずにいた稲毛田氏は、事業承継を行ったその年に「自分の言葉で理念を創りたい」との思いで同友会に入会し、すぐに経営指針を創る会を受講することを決めました。閉鎖的な風土を変えたい、社員には自分の職場と仕事に自信と誇りを持って働いてほしいと、理念策定に真剣に向き合う中、社員の痛ましい事故が起き、悲しみやくやしさの中で、「安全で安心できる職場を作りたい」と強く願います。命と向き合い社員を守れる会社にしたいとの思いから、従業員全員と個人面談を行い、一人一人の声に耳を傾け、会社の雰囲気を少しずつ変えていきました。新しい理念ができ、初めての指針発表会ではかなり緊張したそうですが、「思いはいくらでも話せる」と社員の前に立ちました。当初は反発にもあい、離職者も相次ぎましたが、実直に思いを伝え続けることで理念に共感した社員が残り、今では離職する社員も少なくなり定着しています。働く環境の改善にも務め、給料のベースアップも行い、表彰制度を作り、外国人実習生にもきめ細かな配慮をしました。全従業員で誕生日を祝ったり、長年働いた社員の卒社式も行い感謝状を贈ったりと、人を大切にする経営を実践しています。

オープンな現場づくりと“誇れる仕事”の確立

 三和食鶏を訪れると社員みんなが飛び切りの笑顔と大きな声であいさつをしてくれます。以前は見せたくなかった作業場を、今では誰でも見学できるようにしました。「命の大切さ」を伝えることを重点とし、鶏肉が食卓に届くまでのプロセスを丁寧に説明します。まさに命が食に変わる瞬間を実感することができるのです。開放的だからこそさまざまな視点から見て感じられる屠畜場の姿。そこで働く社員へ向けられた尊敬や感謝の言葉。見学者のフィードバックは必ず社員に伝え、その一つ一つが従業員の誇りと自信につながっています。

未来への投資

 技術面でも、鶏の死亡率を下げる設備投資や、効率的な加工ラインの構築に取り組んでいます。扇風機を増やして冷却システムを改善したり、作業しやすいように昇降台の設置をしたりと、試行錯誤しながら鶏の命と従業員の作業工程に細かな工夫を重ねています。さらに、業界全体の発展も考え、先代が残したこの地の利を生かした新たなビジネスモデル構築に向けて今まさに動き出そうとしています。

人が集う会社へ

 屠殺場という一見冷たく感じる厳しい産業に、温かさと人間性を吹き込もうとする稲毛田氏。「私たちは命の大切さに向き合い、食を通して笑顔あふれる食卓づくりに貢献します。」という理念のもと、生きるもの全ての尊厳を大切にする経営が、稲毛田氏の思いに魅せられた“人“が集う会社へと変革していったのです。

(株)三和食鶏
設立年 1973年(昭和48年)
資本金 72名(うち外国人実習生34名)
年商 前期15億円
事業内容 食鳥処理および食肉販売業
住所 茨城県古河市長左エ門新田889
電話番号 0280-78-1129
URL https://www.sanwa-ssg.com/