
ぜんち共済(株) 代表取締役社長 榎本 重秋氏(神奈川)
厚労省が発表した統計では、2022年12月時点で日本の障害者の総数は約1,164万人、総人口の9.4%と言われています。ぜんち共済(株)(榎本重秋代表取締役社長、神奈川同友会会員)は、知的・発達障害の方を中心に障害のある方を対象とした日本唯一の専門保険会社。本当に保険を必要としている人たちに寄り添い続け、現在の契約者数は6万人を超えています。
日本で唯一の障害者のための保険会社

知的障害者を対象とした損害保険の運用が開始されたのは1981年。のちに、外資系保険会社の営業マンとして活躍する榎本氏が出会うことになる取引先こそが、その生みの親とも言える人物でした。この出会いが榎本氏の人生を大きく転換させていきます。
その後、共に仕事をしていく中で保険に加入できず悩んでいる人たちの存在を知り、2000年に無認可共済事業「全国知的障害者共済会」の立ち上げに携わりました。それを一生涯の仕事にすると決意した榎本氏は、保険会社を退職して共済会に転職。ところが、2006年に改正保険業法が施行され、無認可共済事業は規制の対象とされます。そこで、共済会を株式会社化してぜんち共済(株)を設立し、新たなスタートを切りました。
理想と現実のギャップ

高い理想のもと事業をスタートしますが、保険業者に求められる1億円近い事業資金の調達、そして複雑な書類の作成・提出が必要な金融庁への事業者登録が大きな障壁として立ちはだかりました。30代の社員を2名採用したものの社員同士のトラブルも発生。社内で板挟みの状況と資金繰りに頭を悩ませる日々が始まりました。家族は実家に里帰りさせ、24時間仕事のことを考え続けますが心身ともに疲弊し、電車に飛び込もうとさえ考えるほど追い詰められていきました。
その後なんとか資金が集まり、2008年に少額短期保険事業者登録も完了。販売までこぎつけますが、2名の社員は激務が続いたことで退職しました。社員を大切にできなかったことへの深い反省から、榎本氏は自社の見直しと再建に取り掛かります。その時期に出合ったのが同友会でした。同じような経験を持つ経営者の存在が心の支えになったと同時に、「人を生かす経営」や障害者問題委員会での学びが経営者としての意識改革につながっていきます。
社員の特性を生かし、誰もが働きやすい会社へ

同社は現在、知的障害がある2名の社員を雇用しています。Aさんはお金の計算が苦手でしたが、金銭感覚を養うため毎月の収支管理や障害年金の受給をサポートし、実家にお金を入れられるまでに成長しました。現在は、少額短期保険募集人試験に合格して正社員として活躍中です。重度の自閉症があるKさんはコミュニケーションが苦手ですが、PCスキルが高く、書類のスキャン業務やデータ入力などを担当しています。コロナ禍では、Aさんが出勤して書類の処理などをしてくれたことで、他の社員たちは安心して在宅勤務することができました。「障害者雇用をしていてよかった」と榎本氏は振り返り、AさんもKさんも同社にとってなくてはならない存在です。2020年には、障害者に関する優良な中小事業主を認定する「もにす認定」を取得しました。
榎本氏は、障害者に限らず誰もが働きやすい職場づくりに力を入れています。有給休暇と別に年に1回取得できる「記念日休暇」や、「社員の大切な人」に社長や同僚からのメッセージが添えられた花をプレゼントして仕事の様子を知ってもらうなど、独自の制度を整備。SNSでの情報発信など若手社員の活躍の場も広がっており、2023年度には初の新卒採用にも取り組んで3名の新卒者が入社しました。こうした取り組みは対外的な評価も受け、「ホワイト企業大賞 風通し経営賞」「人を生かす経営大賞 奨励賞」など多くの表彰を受賞しています。
「社員を大切にできない会社に未来はない」と力強く話す榎本氏。人間尊重経営の先に展望しているのは、誰もが安心して暮らせる共生社会の実現です。
| ぜんち共済(株) | |
|---|---|
| 設立 | 2006年 |
| 資本金 | 9,460万円 |
| 社員数 | 30名 |
| 事業内容 | 少額短期保険業 |
| 住所 | 〒102-0073 東京都千代田区九段北3-2-5 九段北325ビル4階 |
| 電話番号 | 03-6910-0850 |
| URL | https://www.z-kyosai.com/ |










