【第2回】経営指針は未来への羅針盤─社員と共に歩む次の10年 (有)ベルエール 取締役 金口 志織 氏(広島)

(有)ベルエール 取締役 金口 志織 氏(広島)

軍隊経営の限界と、事業承継の壁

 (有)ベルエール(金口志織取締役、広島同友会会員)は1992年に金口氏の父が創業しました。金口氏は20代で入社し23年目。30代で事業承継を決意し、社員は仲間だと思えるまでに、そこから10年かかりました。

 以前の同社は、父の圧倒的なカリスマ性で成り立っていました。いわば「軍隊経営」で、社員はただ指示に従い、自主性はなく、雰囲気もよくありませんでした。金口氏も父を真似て経営しようとしましたが、次第に社員との関係は悪化し、辞めていく人も増え、売り上げも下がりました。この状況をつくった問題の根源は、自分に経営者としての「覚悟」がなかったことだと気づきます。

経営指針は「一緒に作る」からこそ意味がある

 そんな中で出合ったのが「労使見解」でした。経営者にとって最も重要なのは「何を大切にし、どこへ向かうのか」を言語化すること。以前は経営指針の必要性を全く理解していませんでした。同友会の先輩が10年にわたり根気よく伝えてくれたのはこのことだったのかと、金口氏は背中を押されるように、広島同友会の経営指針塾に申し込みました。

 2024年度、第8期生として入塾。先輩から「指針書が社員に浸透するには10年かかる」と聞いて、「さらに10年かかるなら、社員と一緒につくるしかない」と考えます。会社に帰り「経営指針書を作るよ」と伝えた時、社員の反応は「えっ、何それ?」というもので、「経営にはこういう指針が必要なんだ」と伝えるところから始めました。

 そして、創業33年目で初めて社員と共に経営理念を見直しました。そこに込めたのは「科学性・社会性・人間性」の3要素。時代に対応し、地域に信頼され、社員をパートナーと見る経営者としての姿勢です。新たに掲げた理念は「私たちは、関わる全ての人たちに、想いを伝える企業として寄り添い、新たな価値を創造し、楽しい未来を創るお手伝いをします」。これは、父の創業時からの思いを、今の社員にも届くような言葉に変えました。さらに補足の文章をつけることで、自分たちがなぜこの仕事をしているのか、より深く理解できるようにしました。社員からの意見で「少し長い」との声もありましたが、理念は長くてもいい。変化を共につくることが大切だと金口氏は実感しています。

 経営指針塾での学びには、社員にどう伝えたらいいかのヒントがたくさんありました。それらを毎日少しずつ伝え、同時に社内の仕組みも少しずつ整えていき、「同友会で勉強してきた」と話すと、社員から「じゃあやってみましょうか」という反応が返ってくるようになり、徐々に変化が生まれました。

 金口氏は入社以来、社員と何度もぶつかりましたが、一緒に考えることで関係は変わりました。「そんな経営者としての覚悟がなかった私を、父は見透かしていたんですよね。それがようやく分かりました」と金口氏は言います。

 経営指針塾の最終講座は、経営指針発表会。社員と一緒につくった経営指針は「指針塾・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。同社は8月決算ですが、今期は過去20年超えられなかった売り上げを更新する勢いです。それは突発的な売り上げではなく、社員と一緒に積み重ねてきた成果だと金口氏は感じています。

一緒に悩み、考え成長していく経営者になる

 金口氏は「経営者として、父のようなカリスマではなく、社員と同じ目線で、一緒に悩み、考え、成長する存在になりたいと思っています」と語ります。

 「同友会に行ってくる」というと社員が「がんばってくださいね」と言ってくれるのは、かつて社員との関係性に悩んでいた金口氏にとって、うれしい変化です。「みんなで経営する」「みんなで会社を育てる」。この姿勢をこれからも大切にしていきます。

(有)ベルエール
設 立 年 1992年
資 本 金 500万円
従業員数 12名
年  商 1億円
事業内容 総合広告業 看板・屋内外サイン・イベント企画、官公庁電子納品・CAD、各種印刷・製本、ホームページ・動画作成
住  所 広島市中区舟入南2-7-1
電話番号 082-233-3366
URL https://bellyell.co.jp/