【第6回】社員と共に成長し、社会に安心を届ける~鹿児島から業界ナンバーワンをめざして~ (有)永田鋼管工業 代表取締役社長 永田 廣樹氏(鹿児島)

(有)永田鋼管工業 代表取締役社長 永田 廣樹氏(鹿児島)

 永田氏((有)永田鋼管工業代表取締役社長、鹿児島同友会会員)は学生時代、父が経営する永田鋼管工業にほとんど関心を持たず、大学卒業後は広島の住宅メーカーに就職しました。営業の現場で経験を積み、副支店長まで務めましたが、やがて家業に戻ります。

 しかし、そこで待っていたのは理想とかけ離れた現実でした。ワンマン経営の父、気に入らなければ職場を放り出す社員。さらに下請けに依存し、専門外の仕事まで抱え込む状況が続いていました。

 それでも家族の支えを受けながら踏みとどまって働くうちに、自分の得意分野を見いだし、公共工事を受注できるまでに成長しました。父とは口論が絶えませんでしたが、その背中を見続けることで、後継者としての自覚が少しずつ芽生えていきました。

 そんな中、過去の粉飾決算が発覚。信用が揺らぎ、将来への不安が重くのしかかる中で、永田氏は必死に経営理念を作り上げました。ところが、その理念は父の怒りを買い、社員の前で親子喧嘩に発展。経営指針書は無残にもゴミ箱に捨てられてしまいます。

同友会で学んだ「第二創業」

 転機となったのは、同友会との出合いでした。入会後すぐに活動に参加し、経営指針セミナーを受講。その後も繰り返し学び続け、4度目にしてようやく経営理念を成文化しました。経営指針書を社員全員に配布し、ホテルで勉強会を開いたときには、会社が「第二創業」を迎えたように感じたと言います。

 青年部会では「恩を返すのではなく、次世代へ送る」という恩送りの精神を学び、求人・共育委員会では「会社の魅力と夢を語ること」の大切さに気づかされました。理念を言葉にするだけでなく、実際の行動に移すことが、社員の信頼を得る第一歩となりました。

「雑相」から育まれる信頼

 社内では「報告・連絡・相談」よりも、日常の「雑談・相談=雑相」を大切にしています。業務の枠を超えたちょっとした会話が、信頼関係を深め、仲間意識を育むと考えているからです。

 また、年3回の面談では社員一人一人の夢や目標を聞き、「頼り・頼られる職人集団」へと少しずつ変化している実感があります。資格取得の補助や育休制度の導入にも取り組み、その成果として、かつては応募がなかった会社に、いまでは自社の理念に共感する人材が集まるようになりました。

 「制度を作るだけでは実現できません。協力し合える空気をつくることが大切だと思います」と永田氏は語ります。

業界ナンバーワンをめざして

 コロナ禍を経て、事業内容も見直しました。従来のように「何でも引き受ける」のではなく、溶接配管の強みを生かした機械器具設置工事に特化。取引先も増加し、幅広い業種とつながることで価格決定権も得られるようになりました。

 近年は社員が減少しても利益率は向上し、効率的に仕事ができていると言います。ただ一方で、「社員を増やすことでさらに利益率を高められるのではないか」との思いも抱いています。現在は休日出勤をせず、残業もほとんどしない働き方が定着しました。

 「業界として永田鋼管工業はニッチな分野を担っています。だからこそ鹿児島で一番の会社をめざしたい。必要とされるナンバーワンとなり、社員と共にインフラを守る仕事を続けたい」と将来像を語ります。

 永田鋼管工業が掲げる経営理念は、「ものづくりを通じて社会に安心を届け、人と人をつなぎ、全てのステークホルダーに貢献すること」。市場環境が変化しても自立した企業として感謝と安心を提供し、社員一人一人が共に学び、成長し、夢と感動を分かち合える経営をめざしています。地域の発展に貢献し、地元で最も必要とされる存在になることが使命だと考えています。

 最後に、こう付け加えました。「自分自身も、器以上に大きくなる必要を感じています」―永田氏の挑戦は、これからも続いていきます。

(有)永田鋼管工業
設立年 1972年
資本金 300万円
従業員数 21名
年商 3億3,300万円
事業内容 社会インフラ設備(発電施設・上下水道施設・ガス施設・工業製品工場・食料製品工場など)の機械器具設置・配管製作取付工事
住所 鹿児島市春山町440
電話番号 099-278-7057
URL https://nagata-kk.com/