【第9回】現場が意思決定できる組織、人生の参加度を高める会社 (株)縁満 代表取締役 大垣 幸平氏(奈良)

(株)縁満 代表取締役 大垣 幸平氏(奈良)

より多くの人に届けられる会社に

 大垣氏((株)縁満代表取締役、奈良同友会会員)は、福祉施設勤務から独立して2016年に高齢者の訪問介護事業所として(株)縁満を起業、ほぼ同時期に同友会に入会しました。理想のケアだけを考えて、当時は事業規模拡大は想定もしていませんでした。しかし経営指針セミナーで経営理念をつくる中で自分たちのケアへの確信が深まると同時に、「よいことなんだからより多くの人に届けたい、それができる会社になりたい」と考えるようになります。また子育て期の女性が多い労働集約型の現場で人繰りに奔走したり、子育てがひと段落したパート職員からの社員転換の希望があったりしたことも、組織化への動機になっていきました。

「現場が意思決定できる」組織をめざして

 指針書をつくりはじめて3年目、幹部社員と一緒に10年ビジョン策定に取り組みました。やりたいことを出し合い、それができる組織づくりをと考えた結果、社員が描いたのは10年後に100人になっている会社の姿でした。みんなが楽しく働いている、利用者やご家族に対しても責任を果たせる盤石さを実現させている。そんな会社をめざそうとすると、経営者だけが判断するのでは企業が成長するスピードも守備範囲も限界があると感じました。そして属人性から脱却して「同じ理念のもと現場で意思決定できる人を増やす」ことをめざし始め、役職登用や幹部会議の仕組み、社員研修の充実を進めていきました。事業も、障害者福祉や農業へと横展開をしながら雇用拡大しています。

成果を出すことより、成果を出し続けること

 指針の浸透や実践は、幹部層が指針書づくりに着手するようになってから、一気に進むようになりました。自分たちが利用者の方に貢献するためには何が必要か、業務や組織をどう変えたらもっとよくなるかを社員が自ら考えるようになりました。会議など直接生産活動でない業務に割く時間が増える中で、これをやっていて本当に利益を上げられるか不安にもなりましたが、「成果を出すことより、成果を出し続けられるチームになること」に重点を置いて考えるようにしました。

 2年前からは、社員が「めざす“縁満人(えんまんびと)”としての行動指針」を作成し、面談や人事評価もそれに基づいて行うようになりました。自分以外の人の言葉が指針書に入ってくると、経営者の自分が理念に沿っていないと気づかされることも多く、日々自分の言動を顧みるきっかけになっています。

「人生の参加度」を上げる会社

 「労使見解」は初めて読んだときから違和感なく、頭ではわかっていても実際にできていない現状に対してどう考えるべきかの指針として捉えてきました。今、社員がつくった自社の行動指針と、同友会の先達がつくった経営者としての指針に自分を照らし合わせる中で、大垣氏は「うちの会社の行動指針を追求していくことは、労使見解を理解していくこととそんなに遠くないと思っています」と笑います。

 指針セミナーをはじめとする学びの場は、起業前から現在に至るまで自分が本当にしたいことを考え選択してきた過程を掘り下げる機会となりました。その時々の自分の内面も改めて見つめ直す中で、やがて社員一人一人に「自分の人生を作ることへの参加度」が上がってほしいと願うようになりました。今期新たにつくったコーポレート理念「豊かな人生をすべての人に」には、そんな思いも込められています。「あ、自分がやれてないわ」経営者にそんな気づきを与えてくれる行動指針は、社員の人生参加度が上がってきた結実のひとつとも言えます。

(株)縁満
創業・設立 2016年
資本金 200万円
従業員数 39名(内パートアルバイト30名)
事業内容 高齢者訪問介護、障害者自立支援、農業事業
住所 奈良県大和郡山市池沢町139-1番地 ダイワ第2マンション102号
電話番号 0743-56-8010
URL https://nara.enman-care.com/