【第11回】自社の強みは社員です！～百万一心のこころで笑顔をつなぐ～ (株)スミリオン　代表取締役　福田　裕聡氏（福岡）

(株)スミリオン　代表取締役　福田　裕聡氏（福岡）

　(株)スミリオン（福田裕聡代表取締役、福岡同友会会員）は、中小企業向けのWebシステム開発などを手掛ける会社です。社名はSmile、Million、Oneをつないだ造語で、戦国武将・毛利元就の「百万一心（皆で心を一つにして協力すれば何事も成し得る）」という言葉に由来します。「『笑い』のある明るい未来をめざす会社であり続け、何事も成し遂げられる『協同精神』を胸に抱きお客様にご満足いただけるサービスを行っていく」という思いが社名に込められています。

「よくない会社」を反面教師に

　代表の福田氏は大学卒業後システムエンジニアとして働いていました。勤めていた会社は人を“もの”として扱うような空気があり、社員が疲弊して次々と辞めていく状況でした。福田氏も知人の誘いに乗って転職しましたが、そこでも自転車操業による賞与未払いや劣悪な労働環境など多くの問題に直面。危機感を持った福田氏は在職中にスミリオンを設立し、数年後に退職して本格的に同社を始動させました。それまで経験した「よくない会社」を反面教師に、「社員を大切にする、きちんとした会社をつくろう」と固く決意したと言います。

経営指針が会社を変える

　設立当初、福田氏は独学で会社を経営していましたが、戦略や方針の立て方に限界を感じていました。そんな中、2014年に同友会と出合います。経営指針書が作成できると知った福田氏は入会してすぐ経営指針作成セミナーを受講。2015年に最初の指針書を作り上げました。しかし社長一人で作成した指針書は「独りよがり」なもので、社員に発表しても反応は返ってきませんでした。悩む福田氏に「社員と一緒に作ったらいいよ」と同友会の仲間がアドバイスをくれました。この助言を機に、社員を巻き込んで会社の方向性について考えるようになり、そして2017年からは社員全員で指針書を作成するようになりました。

　社員と共に指針書を作る中で、経営理念は少しずつ社内に浸透していきました。それを象徴する出来事が起こります。ある顧客との関係が悪化し、取引中止を検討していた際、担当の社員が「それは私たちの理念に反していませんか？」と問いかけたのです。福田氏は「ぐさっときました。社員の方がすごいなと思いました」と振り返ります。この一言がきっかけで顧客との関係を見つめ直し、結果として改善に成功しました。現在も良好な取引が続いています。社員が主体的に理念を体現する組織へと変貌を遂げた瞬間でした。

「立派な社会人」を育てる”共育”

　「子どもたちを立派な社会人に育てるのは企業の役割」と語る福田氏は、社員教育にも力を入れています。共育委員会での他社の社員との交流が自社の社員にとっても大きな刺激と学びになることを実感し、社内でも多様な研修やイベントを設けています。技術面以外の教育に力を入れるシステム会社は珍しく、そこには「一人の人間として成長し、よりよい人生を歩んでほしい」という福田氏の思いがあります。システムエンジニアは一人で黙々と作業するイメージがありますが、実際はお客さまへのヒアリング、チームでの連携、納品後のサポートなど、人と接する場面が多く、人間力、つまり”まごころ”を持って同僚やお客さまと接することが、社内の協力関係、顧客満足度、ひいてはスミリオンの発展につながっていくのです。

　「自社の強みは社員です。社員が成長してくれたおかげで今があります」と胸を張る福田氏。「百万一心」の心で、社員とお客さま双方に笑顔があふれる、そんな会社づくりをこれからも追求していきます。