
(株)Dim 代表 五十嵐 浩氏(福井)
(株)Dim(花ごころ)の五十嵐氏(代表、福井同友会会員)は、社員一人一人への深い信頼と、彼らの主体性を信じて未来を託す覚悟のもと、社員と共に育つ「共育」の精神を実践することで、組織の新たな可能性を切り拓いています。
限界から生まれた「任せる」という決意

かつて、五十嵐氏はすべての業務を自身で抱え込み、トップダウンで指示を出すスタイルを貫いていました。次第に自身の多忙さが限界に達し、プレイヤーからマネージャーへの完全な移行を迫られます。しかし、長年培ってきた仕事へのこだわり、特に「自分のお客さんには自分の作った花を」という強い思いは、社員に仕事を任せることへの大きな壁となっていました。
転機は、物理的に現場を離れざるを得ない状況を自ら作り出したこと。2日間、会社に絶対に戻れない状況を設定し、「なんとかしてね」と社員に伝えました。不安を抱えながらも迎えた2日後、会社は何事もなかったかのように回っていました。この経験が、「任せても大丈夫だ」という確信に変わり、五十嵐氏の意識を大きく変えるきっかけとなりました。
「主体性」を育む組織への変革

この気づきを機に、組織改革は一気に加速。これまでのように日々の業務をこなすだけの体制から、社員一人一人に役割を与え、主体性を持たせる体制へと大きく舵を切ります。M&Aした店舗「ふるーれ・T」の社員も含め、各担当者が半年間の計画を自ら立て、それを発表する場を設けました。目標を逆算し、今何をすべきかを自分たちで考え、実行する。これはまさに、同友会が「労使見解」で示す、労働者の自発性が発揮される状態を企業内に確立する努力そのものです。
「任せる」と決めた後も、つい口を出してしまう時期があったといいますが、「どこまで僕らがやればいいんですか。線引きをしてください」というある社員からのストレートな言葉が、五十嵐氏に自らの甘さを気づかせました。社員からのフィードバックが経営者自身を育て、本当の意味での「任せる経営」が始まったのです。
仕組みが人を育て、人が未来をつくる
社員の主体性を引き出す試みとして、担当者が他の社員に教える仕組みづくりを指示しています。「社長が間に入らない」ことで、社員同士が教え合い、学び合う自律的な組織をめざしており、特定の個人の能力に依存するのではなく、組織として成長し続けるための重要な仕組みです。
「週に1回、何かを生み出す会議」からは、子どもたちが一日店長を体験する「キッズフローリスト」といったユニークな企画が生まれるなど、社員からのアイデアが次々と形になっています。以前は意見しづらい雰囲気もあったといいますが、今では活発な意見交換がなされる風土が醸成されつつあります。
業界の未来を見据えた挑戦

五十嵐氏は、後継者不足により老舗の花屋が次々と廃業していく現状に対し、事業承継を自社の仕組みで解決するという壮大なビジョンを描いています。それは、倉庫機能を持つ拠点を中心に、適正な距離感で店舗展開を行うという独自のビジネスモデルです。この仕組みを体系化し、まずは地域で、そしていずれは全国で展開することで、「全国の老舗お花屋さんの寿命を20年伸ばしたい」と熱く語ります。自社の課題解決から始まった「人を生かす経営」の実践が、今や業界全体の課題解決、そして豊かな社会の実現という大きな目標へとつながっているのです。
経営者がすべてを抱え込むのではなく、社員を信じて任せる。その信頼に応えようと、社員は自ら考え、行動する。そして、その成長がまた新たな挑戦を生み出す原動力となる。この好循環こそが、変化の激しい時代を乗り越え、未来を切り拓く企業の姿なのかもしれません。一人の経営者の覚悟から始まった組織改革は、社員一人一人を主役に変え、会社を、そして業界を、新たなステージへと導こうとしています。
| (株)Dim | |
|---|---|
| 設立年 | 2002年 |
| 資本金 | 200万円 |
| 従業員数 | 8名 |
| 年商 | 1億100万円(2025年7月末) |
| 事業内容 | 生花販売 |
| 住所 | 福井県越前市家久町30-4-7 |
| 電話番号 | 0778-21-1187 |
| URL | https://hana-gokoro.jp/ |










