
サン樹脂(株) 代表取締役 磯村 太郎氏(中同協)
サン樹脂(株)(磯村太郎代表取締役、愛知同友会会員)は、工業用プラスチック部品の製造を行うものづくり企業です。1カ月に約900種類もの製品を製造しますが、そのうち半分が5個以下という多品種少量生産で、半導体製造装置や自動車部品用設備、医療機器、航空業界など幅広い分野で活躍しています。
後継者として入社

磯村氏は大学卒業後、他社での修行を経て1996年に父が経営する同社に入社しました。バブル崩壊後の厳しい経営環境の中、自ら営業に回り仕事を増やしていきますが、当時の社員数は役員を含めて8名、平均年齢46.3歳と若手の採用が喫緊の課題でした。そうした中、きれいな建物や設備があれば人が集まる、いい人が集まれば会社は発展するとの思いから2006年に工場と事務所を新築。新たに正社員3名とパート4名を採用し発展を期す中で、同業者に誘われ愛知同友会に入会しました。
ところが、採用した社員たちはみるみるうちに元気がなくなり、10カ月で3名が退職。理由は「仕事は面白かったし給料も悪くない。エアコンが効いていて働く環境も快適。でも俺はこの会社が嫌いだ」というもので、残った社員に意見を聞くと「頑張った先に何があるのか見えないのがまずいんじゃないですか?」との言葉が投げかけられました。
当時は中途採用のみで、社内には給与体系や就業規則もありませんでした。さらに、事業承継や労使紛争などさまざまな課題に直面していた磯村氏をリーマンショックが襲います。売り上げ8割減という危機的状況の中、磯村氏は改めて「労使見解」を読み返し、自身の経営姿勢を見つめ直しました。そして、社員と本気で向き合うことを決意し、生きがいと働きがいを提供して「この会社で働いていてよかった」と言われる企業づくりへと舵を切りました。
三位一体経営の重要性

磯村氏は、新卒採用をして会社の年輪をつくりたいという強い思いのもと、2009年に初めて愛知同友会の合同企業説明会に参加しました。当日は参加企業38社に対して延べで約1400名もの学生が来場しましたが、同社のブースを訪れたのは他社から紹介された8名のみ。帰りの車内では、一緒に参加した社員から「うちの会社はそんなに悪い会社じゃない。悪いのはきちんと準備をしない専務(磯村氏)だ」と突き付けられました。
この経験を機に、社内に採用チームをつくるなど社員と共に採用活動を行う体制に変更し、翌年には初めて新卒者を採用しました。その後も順調に採用を続けていきますが、数年後から退職者が増加。仕事を教え合う体制が整っていないため新入社員は孤立し、そのフォローために先輩社員の長時間残業が常態化していました。「会社で役に立っていると感じられなければ心が折れてしまう」と磯村氏は振り返ります。そして、社内体制の見直しを行い、作業分解と仕事の切り出しを実施。作業を細かく切り分けて新人でもできる仕事をつくり、少しずつ技術を習得することで仕事の達成感や成長を実感できる仕組みにしました。それによって先輩社員の負担軽減にもつながっています。
若者が働く場所をつくる

当初目標としていた社員数30名を超えた頃、何人採用するつもりなのか?と問われたこともあるとのことですが、磯村氏は「今採用した社員が戦力になるのは5年後。5年後の仕事量は分からないので、仕事量に合わせて採用することはしない。まず採用をして、新たな仕事を作っていくことが重要」と力強く語ります。シニア人材や障害者などさまざまな社員が活躍している同社。21世紀型中小企業に向けた磯村氏の挑戦は続きます。
| サン樹脂(株) | |
|---|---|
| 設立年 | 1985年 |
| 資本金 | 900万円 |
| 社員数 | 70名 |
| 事業内容 | 工業用プラスチック製品の製造 |
| 住 所 | 愛知県北名古屋市六ツ師大島14番地1 |
| TEL | 0568-27-3014 |
| URL | https://sunjushi.co.jp/ |










